息を切らして、前を行くリカと走っていた。
雨はすでに上がっており、ところどころに水溜りが見える。
外靴に履き替える暇もなく、まるで防災訓練の時と同じような感覚である。
うさぎ小屋が見えてきた、というところまで走った時、トウカはようやく声を出した。
息を切らしながら、必死に言葉を発した。
トウカのやけくその一言で、リカは足を止めた。
たしかに、見渡してみれば辺りにそれらしき影は見えない。
番人の姿が見えない。これでは、弱点を知るどころか、ノアの伝言書を渡すことすらできない。
茂みを探して見たり、上から来るのではと試行錯誤したが、やはり番人は現れない。
なぜか、なぜかと唸っていると、リカの視線に気づく。どうした、と言おうとして、背筋が泡立つのを感じだ。
リカは、私ではなく、私の背後を見ている。
急いで振り返れば、そこには浮遊怪異が1匹。
走って逃げようと、顔を元の方向に戻せば、今度は刃物のようなものをこちらに向けて飛びかかってくる真っ白な女。
意味わからん。裏の世界怖い。
刺されると言う結論に至ると、脳が反射で目を閉じろと命令するので、強く、目を瞑った。
…が、トウカが考えていた衝撃はいつまで経っても襲いかかってくることがなかった。
目を開けて振り返る。
そこには、先ほどの真っ白な女が、浮遊怪異を串刺しにしている、なんともショッキングな光景があった。
浮遊怪異の頭辺りに刃物のようなものが刺さっており、黒色の血が滴っている。
女は、まるでゴミでも捨てるかのように、脱力した浮遊怪異を刃物から振り落とし、こちらに歩み寄った。
近くで彼女をみて、思わず、声を漏らす。
たしかに、女は雪兎のようであった。白髪に白い服装、赤い目、そして彼女を一番人外たらしめる、白いウサギの耳が頭から生えていた。
しばらく黙ってこちらを観察していた白い女は、口を開く。
どうやら彼女は、トウカとリカを襲いにきたわけではないようだ。
気をつけます、とトウカが答えると、名乗り遅れてすまない、と言って彼女は口を開いた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。