第10話

9[に]
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2024/03/22 23:37 更新
息を切らして、前を行くリカと走っていた。


雨はすでに上がっており、ところどころに水溜りが見える。
外靴に履き替える暇もなく、まるで防災訓練の時と同じような感覚である。
うさぎ小屋が見えてきた、というところまで走った時、トウカはようやく声を出した。
トウカ
ねえ!リカっ!
トウカ
あのっあのさっ!
息を切らしながら、必死に言葉を発した。
トウカ
うさぎ小屋の番人ってさっ!このまま噂通りなら、私たちが襲われるってことなんだけどっ
トウカ
私たち、襲われたりしないよねっ!?
リカ
えっ!?ごめん向い風で何言ってるか分かんない!!
トウカ
くそ!!
リカ
今のは聞こえたからな貴様!!
トウカのやけくその一言で、リカは足を止めた。
リカ
うさぎ小屋の前まで来たけど、番人いないじゃん
たしかに、見渡してみれば辺りにそれらしき影は見えない。
トウカ
有給でもとったのかな?
リカ
怪異に有給もクソもあるかよ
番人の姿が見えない。これでは、弱点を知るどころか、ノアの伝言書を渡すことすらできない。
茂みを探して見たり、上から来るのではと試行錯誤したが、やはり番人は現れない。
リカ
うさぎ小屋の番人だけデマだった、とか?
トウカ
それはないよ、ノアさんも柳薇さんも番人さんのことを認知してるんだから
なぜか、なぜかと唸っていると、リカの視線に気づく。どうした、と言おうとして、背筋が泡立つのを感じだ。
リカは、私ではなく、私の背後を見ている。
急いで振り返れば、そこには浮遊怪異が1匹。
走って逃げようと、顔を元の方向に戻せば、今度は刃物のようなものをこちらに向けて飛びかかってくる真っ白な女。
意味わからん。裏の世界怖い。
刺されると言う結論に至ると、脳が反射で目を閉じろと命令するので、強く、目を瞑った。
…が、トウカが考えていた衝撃はいつまで経っても襲いかかってくることがなかった。
目を開けて振り返る。
そこには、先ほどの真っ白な女が、浮遊怪異を串刺しにしている、なんともショッキングな光景があった。
浮遊怪異の頭辺りに刃物のようなものが刺さっており、黒色の血が滴っている。
女は、まるでゴミでも捨てるかのように、脱力した浮遊怪異を刃物から振り落とし、こちらに歩み寄った。
近くで彼女をみて、思わず、声を漏らす。
トウカ
雪兎じゃん!
リカ
お前情緒どうなってんの?
たしかに、女は雪兎のようであった。白髪に白い服装、赤い目、そして彼女を一番人外たらしめる、白いウサギの耳が頭から生えていた。
しばらく黙ってこちらを観察していた白い女は、口を開く。
お前の目は節穴か
この学校の敷地内はまだ安全な方だが、裏の世界では基本的に気を抜くな
どうやら彼女は、トウカとリカを襲いにきたわけではないようだ。

気をつけます、とトウカが答えると、名乗り遅れてすまない、と言って彼女は口を開いた。
私は七不思議二番目、兎小屋の番人改め、カノウ
カノウ
ずっとここに滞在しているようだけど、お前たちは何をするつもりだ?

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