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2019/05/13

第10話

第1幕 遠き日の序曲 5
メアリー
メアリー
このかいだんをあがってすぐのお部屋が、
おかあさまのお部屋よ。
ホームズ
ホームズ
ふむ。
こっちよ!と、メアリーが階段を駆け上がる。

「駆け上がる」と言っても、
1段上がるのにホームズの2歩分をかけるので、
実質昇る速さは変わらない。

ひょこり、またひょこりと。

ホームズ
ホームズ
(・・・・)
ホームズはまるで珍しい生き物を見るような目で、
彼女を見ていた。
メアリー
メアリー


なあに?
その視線に気づいたのか。

メアリーがホームズに尋ねる。
ホームズ
ホームズ
いや、子供というものをこんなに間近で見たのが初めてなもので。

実に興味深い行動をするものだと思ってね。
メアリー
メアリー
ふぇ?
ホームズ
ホームズ
お嬢さんは、急いで階段を上がろうとする。

しかし急いだところで、
現場が特に変わることはない。

ではなぜ急ごうとするのか。


大人である俺に遅れをとらないように、
着いてこようとしているからなのか・・・
いやしかし、とホームズは歩みを止める。
メアリー
メアリー
よいしょ!
メアリーはと言うと、
ホームズに構わずいそいそと階段を登っていく。
ホームズ
ホームズ

俺がこうして歩みを止めても、
お嬢さんは登り続ける。

ということは、後者が理由ではない。

メアリー
メアリー
なにしてるの?はやくー!
ホームズ
ホームズ
以前、兄貴が言っていたな。

「子供の行動心理」は学んでおいて損はないと。

家に帰ったらさっそく本を読み直そう・・・たしか、不必要とは思いながらも、捨てはしていなかったはずだ。


ふむ・・・子供というものは好奇心の塊。
特にお嬢さんの年頃は、初めての場所や新しいものに対する興味関心から生まれる探索行動が活発になる。
それは納得できる。

しかしお嬢さんにとってこの屋敷はそれに値しな・・・
メアリー
メアリー
ねぇねぇ。
さっきから、だれとおはなししているの?
ホームズ
ホームズ
いや、ひとりごとだ。
メアリー
メアリー
ひとりごと?
それはたのしいの?
ホームズ
ホームズ
俺の場合は癖だ。
メアリー
メアリー
くせ?
たのしくはないの?
ホームズ
ホームズ
俺はたのしい。
人と話すよりよほど。
メアリー
メアリー
メアリーにもおしえて!
ホームズ
ホームズ
それはだめだ。
メアリー
メアリー
どうして?
ホームズ
ホームズ
お嬢さんのためだ。

「独り言たのしい」なんて思うようになっては、人間的にある意味終わりだ。
メアリー
メアリー
じゃあ・・・

ホームズさまは、

終わりなの?
ホームズはがくりと階段を踏み外した。
メアリー
メアリー
ホームズさま!だいじょうぶですか?
ホームズ
ホームズ
おい、お嬢さん。
なんだそれは。
メアリー
メアリー
え?
ホームズ
ホームズ
「ホームズさま」という呼び方だ!
メアリー
メアリー
ホームズさまは、ホームズさまですわ?
ホームズ
ホームズ
・・・お嬢さんの方が身分は高いんだ。
「様」付けなんかしなくていいんですよ。
メアリー
メアリー
それはだめですわ。
しゅくじょは、男性をよびすてになんてしませんもの。
ホームズ
ホームズ
・・・ではせめて「ホームズさん」で。
メアリー
メアリー
ホームズさん、ですわね!

わかりましたわ!
ホームズさま!
ホームズ
ホームズ
・・・・
メアリー
メアリー
あら?
ホームズ
ホームズ
・・・いや、もういい。

さあ、早く部屋へ。
メアリー
メアリー
はい!ホームズさまっ!
ホームズ
ホームズ
・・・・。
自分より一回りも幼い女性に、
「ホームズさま」と呼ばれることが、なんとなく・・・倫理的に・・・誤解されるのでは・・・と僅かに思いながらも、直る見込みがないと3秒で悟り、ホームズは受け入れることにした。




そして階段を登り切ったところで、
メアリーが足を止める。
メアリー
メアリー
てまえのおへやが、おきゃくさまを、おとおしするおへや!
そのむかいが、おかあさまのおへやよ!
そう言ってメアリーが手前の部屋の扉を開けようとしたその時・・・。
メアリー
メアリー
きゃっ!?
手をかけた扉が勝手に開き、
驚きと反動で後ろに倒れそうになったメアリーをとっさにホームズが支える。
レストレード
レストレード
ああ!!メアリー嬢、失礼しました。
お怪我は?
メアリー
メアリー
だ、だいじょうぶです。
レストレード
レストレード
よかった。

それよりホームズ!
勝手な行動は謹んでくれたまえ。
庭にいると言いながら、見に行けばいなくなっていて・・・探したじゃないか。
暗緑色の絨毯が広がる20畳ほどの応接間には
レストレードと、屋敷の使用人が勢揃いしていた。

レストレードはホームズの顔を見て、
はぁ、と溜め息をつく。
ホームズ
ホームズ
人の顔を見て溜め息とは、
君は失礼なやつだなレストレード君。
レストレード
レストレード
それはおまえがっ・・・!
使用人のひとりが、レストレードの声を遮るほど大きな声を上げ、メアリーに駆け寄る。
メアリー
メアリー
アンナ・・・
アンナ
アンナ
メアリー様、どちらにいらっしゃったのですか?!・・・心配いたしました。
メアリー
メアリー
・・・ごめんなさいアンナ。
その・・・お外で遊んでいたの。
アンナ
アンナ
そうでしたか。
今度からは必ず伴をお付けくださいませ。
メアリー
メアリー
うん・・・
ホームズ
ホームズ
・・・
メアリーは1人になりたかったのではないだろうか。
少女の返事を聞いて、ホームズはそう思った。








つづく