第2話

感触と感覚
2,241
2023/10/25 10:08
H side


大きく見開いた大我の瞳に、はっと我に返り




「あっ……ぁ、ぁ、…!!ごめんっ……ごめっ……」




口を押さえながら後退り。




や、やべぇ、ちょー柔らかい唇……じゃなくて!!




しまった!!
早いよ!早いって!俺



真っ赤な顔をした大我は固まったまま俺を見たけど
すぐに目を逸らす。



嫌だったかな……



玄関で……まだ家に入って数分しか経ってないのに……こんな、不意打ち……
待ち切れない野獣みたいじゃん




俺のバカ!!!!!




もっと紳士的に、大我との初めてのキスではないけど
恋人としての初めてのキスは大切にしたかったのに
なんだよ、これ



さっそく出たよ「こんなはずじゃ……」ワード。



片方ずつの手に紙袋を持ったまま



「ごめん……」



2人の間に気まづい空気が流れていく。



「なんで謝るの」


「え…………」



一度逸らされた視線が重なれば



「嬉しいよ」



目頭がジワジワと熱くなっていった。



「…………大我」


「したいと思ってくれたんでしょ……すごく嬉しいから」



ほわんと包み込んでくれる笑顔に
胸を鷲掴みされ一瞬呼吸が止まる。



ダメだ!ダメだ!!
心臓が持たない!!!!!



恥ずかしそうにハニカム大我が可愛過ぎて
再びキスしようとしてる自分を必死に抑えた。



「したいと……思っちゃった……」



何言ってんだ俺!きもっ!



「ふふふっ。ありがと」



頭が、身体が沸騰していく。
真夏の気温より
大我熱の方が危険だ。



「お腹空いたね。早く食べよ」



空いた片手に大我の空いた片手が重なり合い



「北斗の手汗ハンパないよ」


「おっ……おまえもすげーよ?!」


「ふっはははっ」



大好きな人の笑い声に安心した俺の手は
ビショ濡れのままシッカリと大我の手を握り締めた。










家の中で手を繋ぐなんて初めて。
手汗がハンパないまま繋いでたって気持ち悪いだけなのに全然離したくない。



寧ろ、大我の汗なら浴びたいしね。



相当力強く握ってしまっていたのか



「お酒……冷やしておこうか」



大我が繋がれた方の手を気にしながら言ってきたから



「あ、っ……ごめっ……ん」



慌てて手を離す。
大我から離れた手を何処にやっていいか分からないほど動揺を隠せないでいた。



「謝らなくていいのに」


「そぉ……?」


「そんな……気遣わなくていいよ。北斗にされて嫌な事なんかないし……あ、浮気は嫌だけど」


「しねぇよ!!!!!!」


「……っ、ビックリした」



食い気味の大声。
やべぇ奴じゃん!!



「あっ……ごめん……」


「ふふっ、また謝る」



自分でも可笑しくなるぐらいテンパってるし
調子がだいぶ狂ってる。



でも、仕方ない事だって事も分かってる。



今までだって十分、大我に狂わされてきたんだもん
こんな、大我を独り占めの空間で平常心で居れるわけない。



まだ始まったばかりだと言うのに
自分がこれからどんな風になっちゃうのか怖くて堪らないけど




けど、
なんだろ、
やっぱり




「ほくと、かわい」



俺の選んだ人は
全てを受け入れてくれそうな気がした。




続く

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