私の必死の叫びにようやく何が起きたかを理解した先生はようやく蒼流のもとに駆け寄った。
図星をつかれて少し焦る。が、本当のことを言うか少し悩む。
蒼流に記憶を思い出して欲しくて全てを話した、なんて言ったら先生はどんな顔をするだろうか。そして私と蒼流はどうなってしまうのだろうか。
まさかの発言に言葉を失う。なら…もう思い出せないのか……?でも、実際思い出せそうではあった。なら、完全に忘れたことにはならないのではないか?
その言葉にドキッとする。私だけでも忘れたくない。理想をいえばみんな仲良く逃げることが一番だ。が、そんなことは不可能だ。蒼流はもう確定で消されてしまうのだろう。私はどうすればいいのだろうか…?
もう、もう耐えられないかもしれない。記憶を消されればもう言いなりだ。逃げ道はない……いや、逃げようと思えばなんとかなる気もするが…多分無理だ。でも…っ、…諦めたくない。
先生が言葉に詰まっている。なにか、なにか迷っているのだろうか。最近、というか昨日からだけれども、そこからなんか先生がおかしい気もする…
先生がこっちに近づいてくる。またっ、気を失うっ…?そう考えるだけで背筋が凍る。そう思っていたら先生が私の肩をつかみ後ろに振り向かせ首の後ろを二本指でポンッと叩いた。
こんなこと、まえにもされたような……?そんなことをかんがえてもしょうがない。あれ、なにも、かんがえられな……あれ、わたしっていま…?
手を引かれ歩かされる。ふらふらと私はついて行くことしか出来なかった。そこからはいまいち記憶が無い。ただ、先生が蒼流を他の誰かに渡して扉を出たところまでは覚えている。
俺はどうするべきだろうか。柚月ちゃんを、柚月ちゃんの、記憶を消しておくべきなのか……?出来ればこのまま行きたい。だが、柚月ちゃんがなかなかこりてくれない。早くこりてくれなければ強制的にやるしか…っ。蒼流は無理そうだな。思い出せても、いや、そもそも中途半端にしか思い出せないだろう。中途半端に思い出すのは良くない……蒼流からしても、俺らからしても…蒼流の記憶はそっとしておけば無くなるだろう。柚月ちゃん。もう少し、もう少しだけ見てみるか……
記憶が……ある…?完全に無くなると思っていた、が。なんでだろうか……?というか、先生がいない。前までいた部屋に入れられている。扉も何故かなく、カードキーも無くなっている。私、閉じ込められているのか…?
出来れば蒼流に会いたかった。他の人に引き渡されている時点で無理だとはわかっていた。が、蒼流に会えればなにか話せると思ったから……無理だと分かっていても、もしかしたら。という気持ちの方が大きかったから…でも、無理そうだ。どこからも返答がない。どうすればいいんだろうか。ずーっとそんなことを考えていた。それから、どれくらい時間が経ったのかも分からない。だんだん眠たくなってきた……
寝ていた。寝落ちと言うやつか。最近寝落ちなんかしたこと無かったな…多分眠くなったのは色々と動いたりしていたからだろう。それにしてもお腹が減った。喉もかわいた。食料も……ない。どうすれば……先生がてっきりくるのかと思っていたがまさか誰もこないだなんて。
この部屋の向こうから声が少し聞こえた。この部屋、もしかしたら防音工事をしていないのかもしれない。ということは中からの声も外にとどくのか?なら…?
少しとどまりつつ先生の名前を呼ぶ。案の定返事がない……
少し間を置いて返答がきた。なんだろうか。これは先生の作戦なのか?私をなにかするための方法なのか?それなら反応しない方が良かったりするのか…?でも、これしか出してもらえる方法は…っ。
必死に叫ぶ。これしか何とかもう方法が…
急に変なことを言い出す先生に少しびっくりした。
答えにつまる。ここで、もしここではいっていったら、何をされるか分からない、が。でも、それ以外に助かる方法もない……私は、どうすれば…?
そしてハッと壁を見るとそこに扉があった。そしてガチャという音とともに扉が開き先生が来る。
零兎先生に渡されたのは新しい…首輪……?別に変わった感じは無さそうだ。
ガチャ
本当だ。外れるようになっている。前までは全く開く素振りが無かったのに…そして、これをつけなければいけないのか……?今なら逃げられるか…?いや、無理だな、出口が塞がれてる。
首を通し、ガチャと付ける。試す感じに少し外そうとしてみるがビクともしない。
先生のその言葉がまた、また記憶を落とす最後の言葉だった。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。