第14話

犯す
22
2025/04/17 11:42 更新
一青零兎
一青零兎
何度目だろうか。正直言ってこれ程記憶を飛ばした子はいない。でも、しょうがないのかなぁとも思う。俺が渡した首輪は"こっち側"に来ることが確定した子が付けるものだ。GPSや番号。電気ショックなどが取り付けられていて、どこの誰なのか、そして本部からも操作ができる。まぁ、俺も出来るが。本部と操作が被った場合は本部が優先される。柚月ちゃんにはこれから色々してもらわないとならない。記憶が残っている子は人を殺したりする事にやっぱり抵抗が大きくなる。そうすると、裏切りなどが発生しやすくなる。それを防ぐために、色々な工程を挟む。らしい……まぁ、俺もその工程を通ってきたが……柚月ちゃんが耐えられる気がしない。ただでさえ諦めさせられた俺ですら辛かったのにまだ希望を持っている柚月ちゃんがこれを受けたらどうなるのだろうか。でも、俺にはもうどうにもできないのかな。とりあえず起こさないとな。
花咲柚月
花咲柚月
…ぁ
…え?内心ほんとにそんな感じだ。先生は床に座っているけれどその上に私が寝っ転がっているという不思議な感じだ。簡単に言えば膝枕という感じだ。なぜこうなっているのだろうか…?
一青零兎
一青零兎
おはよう
花咲柚月
花咲柚月
あ、はい…
…沈黙が気まずい。というかこの姿勢が気まずい。今すぐにでも起き上がりたい…が、何故か体が動かない。意識はハッキリとしているのだが体が痺れているというか力の入れようがないというか…
一青零兎
一青零兎
これ持ってもらって…
花咲柚月
花咲柚月
…え?
先生がどこからか包丁を持たせてきた。何のへんてつもないどこにでもありそうな包丁だ。が、もたせられたはいいものの、離そうとしても離すことが出来ない。
一青零兎
一青零兎
………ね。
花咲柚月
花咲柚月
…な、なんて…?
なにか、なにか先生かを先生が言ったが声が小さく聞き取れない…そして、その言葉と同時に体が動き出す。首がピリピリしていることから要するにこの首輪のようなものが原因なんだろう。目の前には同い年ほどの女の子がいる。その子は口を塞がれ手足をしばられ身動きが取れなくなっている。そして私は、自分の意思と反してうごいてしまう。そして何故か喋れない。助けも呼べない。なにも、動けない。
一青零兎
一青零兎
一瞬…だから。
その先生の言葉で私は女の子の目の前へと歩き出してしまう。その瞬間嫌な予感がした。包丁…勝手に動く体…いやだと思っていても体が言うことを聞かない。そして、その意思と反して私はすっと包丁を刺した。目の前の子は泣き、もがいている。そんな光景を見ても私は何も動けなかった。目の前の子がパタリと…力が抜けたようになった瞬間に拘束が解けたような感じになった。
花咲柚月
花咲柚月
ぁ、あぁ……ぁぁ……
パニックで何も言えない。せめてもと包丁を抜く。そして血まみれになった包丁をカチャンと床に落とす。私は頭がごちゃごちゃになりぺたりとゆかに座り込んでしまった。
一青零兎
一青零兎
おわったね…
先生が平然と言うその言葉がすごく怖かった。怖くて先生を手で押した、が、大人だからか、それとも恐怖でまともに手に力を入れられてなかったからか、ビクとも動いてくれない。
花咲柚月
花咲柚月
せ、せんせぇ…っ
パニックになり先生に泣きついてしまった、が、よく考えると先生にやらされたんだ。でも、先生が…あの時言っていたのは…聞こえなかったあの言葉は…私に対して……。つかれたな。そういえば一回寝てそれ以降寝てないっけ……
一青零兎
一青零兎
…え?
柚月ちゃんが泣きついてきたかと思えば寝た…?まぁ、でも頑張ったから許してあげるか…でも、辛かったろうなぁ。
一青零兎
一青零兎
死んでる。まぁ俺が殺させといてなんだが…この子痛かったろうなぁ。ナイフで刺されたことないから具体的には分からないけど…俺、いやだなぁ。こんな世界。いや、別に頭脳のいい人が良いことをしてくれるという保証もないということがわかっているのにそうするのが国だ。ちょっと意味がわかない。本当に、早くこの制度が終わればいいのに。
一青零兎
一青零兎
トラウマついちゃったかなぁ
俺も最初そうなってしまった時一年ほど立ち直れなかった。まぁ、初めて殺人を犯したんだ。もう後戻りすらもできないんだ。そんな絶望的な状況なんてない。これでトラウマが着いているようならあとは俺らの仕事を少しづつしてもらうだけだ。まぁ、トラウマが着いていれば、の話だけれど。これで着いていなかったら。多分もう無理だろうな。"先輩"も辛抱が切れるだろう。そうしたら、柚月ちゃんは…いや、もう最悪のことを考えるのはやめよう。とりあえず今は寝かせてあげようかな。疲れただろうし。A室のベットでいいか…
一青零兎
一青零兎
…おやすみ。
すやすやと眠る柚月ちゃんをベットに置き頭を撫でる。俺って本当に何をしてるんだろうな…こんな子供にこんなことをして。しかも俺も不本意だし…あぁ。星空が綺麗だ。ここ最近外に出てないな。たまには外に出て星でも見てみるかな…
一青零兎
一青零兎
…綺麗だ。
一等星がキラキラと輝き周りの小さな輝きの星々も美しい。こんな星空なかなか見た事がない。というかこんなに感動したのは初めてだ。
一青零兎
一青零兎
……
言葉さえも失ってしまう。こんな星空もしかしたら人生でみれるのは今日だけかもな。早く帰ろう。先輩に外に出ているとバレたらどうなる事か…

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