そんな押し問答の末に、腰が重すぎるヘチャンを外に連れ出すことに成功してふたりで訪れたごはん屋さん。めんどくさいと言われてまでヘチャンにこだわる必要はないのかもしれないけれど、食の好みも合うし鍛えてないし(タンパク質がどうのとか言うやつもいるから)、なんだかんだ居心地がいいのは確かでつい声を掛けてしまうのだ。
予約していたとおり個室に通してもらう。美味しそうなのはたくさんあるけど、ヘチャンも俺もあんまり食べれる方じゃないし、数品頼んで様子を見ることに。
それにしても、やっぱり嫌々だったかな。向かいに座ってスマホをスクロールするへチャニの表情から気持ちは読み取れないけれど、いつも無理言ってついてきてもらっている自覚はある。せめてご飯が美味しかったらいいな。そしたらきっとへチャニも、来てよかったって思うはず。
おー、ぷりぷりだ。辛いけど甘くて…なんか深い味。野菜もシャキシャキで脂っこくなくて…わー!これご飯と合う…!なにこれすごい、めっちゃ
気の抜けた声に弾かれるように顔を上げれば、へチャニが俺を見て笑ってる。ご飯に集中しすぎていたせいで、へチャニが何で笑ってるのか全然分からない。でも、面白くて笑ってる感じじゃなくて、なんか、微笑まれてる感じ…?
何その顔。へチャニの目尻が地面に着きそうなくらい笑顔が柔らかくて、その視線から逃げるように水を飲む。
あ、慌ててなんかない!言い返したいけど、呼吸を整えるので精一杯で、代わりにキッ!と効果音でもつきそうな勢いで睨んでやった。それにもへチャニは、くすくすと笑うばかりで。
ぶわあっと、耳が熱くなる。へチャニが俺に''可愛い''なんて絶対ふざけて言ってるだけなのに、こんな反応しちゃうのはおかしいんだって!
……でも、からかわれてる感じはしない。
へチャニも、優しく笑ってるだけ、だ。
fin.












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。