瑠花は机に並べられたパンを見ていう。父の姿が見当たらないのはおそらく仕事に行ったからだろうか。
瑠花は少し悩んだあと、蒼葉母にいう。本人は「はいはーい」と粉末ココアを出してココアを作り始めた。
芽衣子が座りながら母に向けていうと呆れつつもカップを一つ増やした。
目が覚めてきた芽衣子はキッチンで朝食を作っている母に聞く。蒼葉家では海音が学校に行けなくなった日から2週間に一回は学校に行くようにしようと決めていた。理由は挙げたらキリがないが、一番は進路に影響するからだ。
いつか降りてくるでしょ、と軽めに言う母親を見て芽衣子は「ふーん…」と呟いた。
どうやら最初のほうはクラスメイトや先生、担任の話をよくしていたらしい。だが、二学期くらいの頃からだろうか。その話をしなくなったと同時にあまり腕のほうを見せなくなった。
そう言っていると本人が来たが、ふらついている。すぐ近くにあった椅子に座り突っ伏した。
と、弱々しい声で言う海音に芽衣子は「熱はなさそう」と首のほうを触って確認する。
芽衣子と瑠花のほうにココアを置きながら聞く。
母がそういうと、海音は「うん…」と呟いてソファに横になった。母は洗面所からタオルを2、3枚海音の近くに置いておいた。
顔に出ていたのか芽衣子に向けて母は言う。それはそれで心配だが。
どうやら聞こえていたらしく海音にそう言われるが即否定した。母は当日休めない職に就いている。だが、この状態の海音を1人にするわけにはいかない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。