KAIRYU side
楽屋に入った瞬間、
メンバーの声が聞こえた。
コイツも…いつも通り。
トーンも、テンポも。
……なのに。
なんでかわからんけど、
胸の奥が一瞬だけ引っかかった。
視線を向ける。
笑ってる。
ちゃんと、笑ってる。
でも。
俺とは、合う。
メンバーとも、合う。
——でも、
…入口の方だけ、避けてる。
その理由が分かるまで、
そんなに時間はいらなかった。
視界の端に、見えた。
あなたちゃん。
今日、
俺らの担当じゃないはずなのに。
あなたちゃんも気づいて、
一瞬だけ足を止めて、
小さく会釈した。
声、
ほんの少しだけ低い。
これ、
偶然じゃない。
セイトは、
見ないようにしてる。
あなたちゃんは、
見てしまってる。
…その差が、
一番しんどいやつ。
さらに、
俺だけは見てた。
あなたちゃんが楽屋を出ていくとき、
一瞬だけ、振り返った。
——セイトを見るために。
それを見て、
俺は確信した。
あなたちゃんはもう、とっくに覚悟してる。
なのに…
セイトはまだ、
逃げ道を探してる顔をしてる。
あなたちゃんが出ていった事すら
気にしていない程で、
セイトは何事もなかったみたいに
話し始めた。
冗談も言うし、
笑うし、
空気も壊さない。
……壊さない、だけ。
あれはもう、
隠せてるレベルじゃない。
セイトは、
自分だけがバレてないと思ってる顔をしてる。
そのくせ、
一番大事なところで何も言わない。
多分、
そろそろセイトは限界や。
俺は、
スマホを握ったまま少し迷って。
——やめた。
今、俺が出るとこじゃない。
…いや、違うわ。
この感じ、
俺じゃ受け止めきれない。
ふと、
タクトの方を見る。
見た時には、すでに見られてた…
ただ、何か聞いたげな視線を
真っ直ぐ向けられる。
夜、
もし…セイトが電話するなら。
…崩れるなら。
——たっくん
きっと、たっくんも気づいてる。
俺は、
何も言わなかった。
言わない代わりに、
決めた。
その時は、
崩れさせてやってくれよ。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。