テオくんは振り返った。
その目はまだ泣いていた。
ー ー ー ー ー ー こっからテオくん目線 ー ー ー ー ー ー ー
俺はお父さんが大好きだった。
もちろん、お母さんも。
俺はお父さんとお母さんの三人家族だった。
毎日が幸せだった。
あの時までは────
狼と人間のハーフは4年ごとに人間と狼になる。
要するに、
生まれた時は人間か狼になっている。
その4年後、人間だった狼ハーフは狼になる。
その反対に狼だったやつは人間になる。
その変身する時間帯は満月の夜12時だ。
ここ、鏡の国は満月が4年に一度。
だから俺は3、4年くらい前までは狼だった。
ついでにお父さんとお母さんも。
たしかあの日は満月の日の夜だった。
あと数時間すれば俺らは人間になれたのに。
満月を見に俺らは崖の方へ向かった。
すると突然、お父さんとお母さんは茂みに俺を投げた。
パァァン!!!
なにが起こった?
なんの音?
俺は理解が出来なかった。
やっと落ち着いた頃に俺はお父さんたちのほうを見た。
言葉を失った。
お父さんとお母さんは動かない。
冷たくなってる。
答えてもくれない。
いつもなら『大丈夫だそ』とか『大丈夫よ』って、
言ってくれるのに。
まだ俺は狼だから周りからしたら吠えてるようにしか聞こえてないだろうけど、
俺の中では必死に呼んでいた。
撃ったやつはどこだ?
誰だ?
俺はまだ狼。
この足の速さを使ってやる。
俺はとにかく音源の方へ走った。
そっから記憶があまり無い。
ただ、
暗くて赤くて鉄の匂いがする。
それだけ。
ー ー ー ー ー ー ー こっからじんたん目線 ー ー ー ー ー ー ー ー
あれは死体と言うより人骨だったな、今思えば。
テオくんが悲しい顔をしたのですかざす言った。
そしたらテオくんが『ありがとう』と言って照れくさく笑う。
さっきと同じように。
俺はテオくんから目を離して小川の方を見た。
そして話した。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。