こんにちは、ナラリラです。
この度は今作品『自分、イケメンに惚れられました』をお読み頂いたこと。また、百名の方にお気に入り登録をして頂き、この場をお借りして御礼申し上げます。
スタイルとしては、友情を描いたもの、恋愛系などのものを書かせて頂いております。最近では、ミステリーなどにも手を出そうと考えているところです。
さて、僕はいくつか作品を連載・完結させています。改めてすべて読み我ながら感じたのは、『同じようなパターンのものが多い』ということ。
自分でも、これは飽きる、つまらないものだと思いました。
そこで、この作品のこのページで【リクエスト】を受けようと思います。
コメント欄に《作品名》《あらすじ》《人物名》《キャラクター設定(性格)》などを書いて頂ければ幸いです。
これからの作品も、どうぞよろしくお願い致します。コメントも気軽に打ってください。
最後に、あなたさんと鈴のデート編を書かせて頂きました。
長々しい文章の後の口直しとして、お読みください。
--------------------------------------------------------------------
高校最後の夏休みの、ある日の昼過ぎ。
勉強漬けの日々を送っている中、今日は半日遊ぶ予定である。
待ち合わせのベンチに座り、秒針の動く腕時計を見る。予想通りだったものの、ついため息が出てしまった。
空は快晴。雲一つない…とまではいかないけど、気持ちのいい空だ。
聞き覚えのある声が、遠くから私の名前を呼んだ。自然と脳裏にシルエットが浮かび上がる。
声のした方へ目を向けると、こちらへ走ってくるイケメンな男子がいた。
石黒先生は鈴の所属する、バスケ部の顧問。鈴はとっく引退しているが、よく後輩へのアドバイスを求められるという。
すると鈴は私の手を握り、横に並んできた。付き合ってしばらく経つけど、この感じは今でも慣れない。
緊張がバレないよう、できるだけ平然を装う。しかし、彼にはバレてしまった。
そこまで表情に出やすいとは…。そんな自分に悩みながらも、私は足を進めた。
園内に入ると、明るい音楽が聴こえてきて、小さいころの思い出が頭をよぎった。
勉強漬けだったからか、多少子供っぽくなってしまった。勉強漬けの日が続いたからだろう。
解説をする鈴の顔は、とてもふにゃっとしている感じだった。顔が緩んでる…まあ、もう慣れてしまったのだけれど。
繋がれた手とは反対の手で、鈴にデコピンをくらわした。
そして私は、鈴の手を引いてアトラクションへ向かったのだった。
道の端にあるベンチに腰を下ろし、ペットボトルの水を喉へ流し込む。鈴の帰りを待ちながら、スマホを手にした。
画面上部には15:27という表示。ここに入ったのは13:35だったけど、もう2時間も遊んでいた。
ぼんやりと画面を眺めていると、首に何か冷たいものが触れた。
冷えた首に手を当て、後ろを振り返る。そこには目が痛くなるほど、輝く笑顔の彼がいた。
怒る私を見ても、彼は一切笑顔を絶やさなかった。逆に笑顔になっている気がする…。
鈴に二つのアイスを差し出される。イチゴ味とチョコ味。私は右にあった、イチゴ味を取った。
冷たい袋を開けて、中から棒アイスを取り出す。冷気が手元に落ちてくるのが、ひんやりして気持ちよかった。
2人ベンチに並んで、アイスを食べた。水なんかとは比べ物にならない。
そんなことを考えていると、不意に水族館のことを思い出した。
全力で否定する姿が、いかにも嘘くさい。これは何かあるんだろう。
疑問を抱えながらも、私たちはアイスを食べ終え水族館へ向かった。
地図付きのパンフレットを手に、私たちは足を進めた。
イルカの水槽は奥の方に示されていて、道中に色々なものが見れた。イルカが目的だったけど、奥にいてくれたお陰で巨大水槽も見れたし。
その後彼に聞かされたのだが、エイとマンタは口の位置で見分けるらしい。…恥ずかしい。
なんだかんだで、私たちはイルカの水槽まであと数十メートルの地点まできた。
すると、横を歩く鈴が声を上げた。
鈴が声を上げるのは珍しい。私もアザラシは好きなので、彼の視線の先に目を向けた。
愛嬌のある顔に引かれ、私たちは人集りへ混ざった。
ガラスの向こう側には、マイクで解説をする飼育員さんと、数頭のゴマフアザラシ。子供のアザラシもいて、更に心が和んだ。
鈴が見たそうにしている感じだったので、私はこのフロアにしばらくいることにした。
今見てる水槽の壁一枚挟んだ隣には、小さいペンギンがいて、反対側にはセイウチがいるこのフロア。
改めて思ったのが、日本を出なければ会えない動物たちを見れる水族館や動物園は、とても貴重な場所だということ。
ラッキーなんて気持ちが湧く。と同時に、動物たちが可哀想に感じられた。
ポツリと呟いた言葉は、周りの誰にも──鈴にさえ届かなかった。
イルカたちは、水槽というより専用のプールの中にいた。泳いでいるのは5頭くらい。灰色に似た光を反射する細い体は、いつ見ても綺麗だ。
台詞的にはキュンとしたし、なんか嬉しい。しかし今してる笑った顔は、いつもの無邪気さを孕んだ笑顔ではない気がした。
イルカと触れ合うのは、人生これが初。体験できるのは、輪投げとサインを出すことだった。
イルカはプールの真ん中で、水面から顔を出しこちらを見ている。少し広いプールの中心は、ステージにいる私たちからは多少距離があった。
わかるはずもないが、一度イルカに声をかけた。
飼育員さんに言われたように、一度手を叩く。そして輪をしっかり握り、斜め右に向けて投げた。
自分的に高さはあって、少し不安になる。その刹那、いつの間にか潜っていたイルカが水中から飛び出し、投げた輪っかを首に通した。
輪を首にかけたイルカは、水しぶきをあげプールの中へ入る。水中の黒い影は私たちの方へ来て、目の前に顔を出した。
少し出ている背中を、優しく撫でる。初めて触るイルカの肌は、同じ哺乳類でも全く違った。
鈴はさっきから、後ろでずっと見守ってくれている。外した輪っかを彼に預かってもらい、手を振ってみた。
イルカは水中へ戻り、姿を消してしまう。もうさよならだと思うと、声が出てしまった。
そんな時、突然プールから大きな水しぶきが上がり、イルカが空中に飛び出していた。
空中に投げ出された体は水の中へ戻り、また私たちの前へ戻ってきた。
こんな感じに、他にもサイン出しを体験した。
水族館を回り、その後にアトラクションを少しかじれば、外の大きな通りではパレードが始まっていた。
空はもう真っ暗。明かりはパレードの台車くらいしかなかった。
今日ここに来たのは、本当は鈴から先週くらいに誘われたからなのだ。
…初デートのお誘いなのかはわからないけど。
前から不思議なのが、なぜ「好き」とか「会いたい」と普通に言えるのか。なぜ頭はいいのに、時々アホになるのか。
天然タラシとは、こんなやつのことなのたろうか…恐ろしい。
最後に大きな台車が見えてきて、盛り上がる反面、寂しくなった。
目の前を通り過ぎると、周囲の人たちも出口へ向かう。小さい子から、私たちと同じくらいのカップルも見られた。
出口までの距離は、そう遠くない。楽しいことは本当に、早く過ぎ去っていった。
ここを出て家に帰れば、再び勉強漬けになることは間違いない。ため息が出てしまった。
鈴はくすくすと笑った。どうせ、こんなやつはとっくに終わっているのだろう。
へーへー。私はまだ終わらせられないバカですよーだ!
なんだか、一番言われたくなかったかもしれない。
学力の差もあるし、鈴と私はもちろん別々の大学へ行く予定。なんか寂しいな、なんて自分でも思ってたのに、一番離れたくない人に言われるとは…。
付き合ってるなら、会えばいいじゃん…バカ。
恥ずかしくなった私は、繋がれた手を解き走った。
最後までバタバタしたまま、デートは幕を下ろしたのだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!