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第30話

作者より(+番外編)
1,538
2019/03/29 14:11
こんにちは、ナラリラです。

この度は今作品『自分、イケメンに惚れられました』をお読み頂いたこと。また、百名の方にお気に入り登録をして頂き、この場をお借りして御礼申し上げます。

スタイルとしては、友情を描いたもの、恋愛系などのものを書かせて頂いております。最近では、ミステリーなどにも手を出そうと考えているところです。

さて、僕はいくつか作品を連載・完結させています。改めてすべて読み我ながら感じたのは、『同じようなパターンのものが多い』ということ。
自分でも、これは飽きる、つまらないものだと思いました。

そこで、この作品のこのページで【リクエスト】を受けようと思います。
コメント欄に《作品名》《あらすじ》《人物名》《キャラクター設定(性格)》などを書いて頂ければ幸いです。

これからの作品も、どうぞよろしくお願い致します。コメントも気軽に打ってください。
最後に、あなたさんと鈴のデート編を書かせて頂きました。
長々しい文章の後の口直しとして、お読みください。
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高校最後の夏休みの、ある日の昼過ぎ。
勉強漬けの日々を送っている中、今日は半日遊ぶ予定である。
あなた

遅いなあ…

待ち合わせのベンチに座り、秒針の動く腕時計を見る。予想通りだったものの、ついため息が出てしまった。
空は快晴。雲一つない…とまではいかないけど、気持ちのいい空だ。
??
あなたちゃーん!
あなた

あ、やっと来た

聞き覚えのある声が、遠くから私の名前を呼んだ。自然と脳裏にシルエットが浮かび上がる。
声のした方へ目を向けると、こちらへ走ってくるイケメンな男子がいた。
鈴
ごめん、石黒先生に止められちゃって…
あなた

時間には間に合ってないけど、3分だから許す

石黒先生は鈴の所属する、バスケ部の顧問。鈴はとっく引退しているが、よく後輩へのアドバイスを求められるという。
鈴
ははっ、ありがと。次は遅れないから!
あなた

う、うん…それじゃ、入ろっか

鈴
だね!
すると鈴は私の手を握り、横に並んできた。付き合ってしばらく経つけど、この感じは今でも慣れない。
緊張がバレないよう、できるだけ平然を装う。しかし、彼にはバレてしまった。
鈴
緊張してる?
あなた

な、なわけ!

鈴
ふふっ、顔に書いてあるよ
あなた

うっ…

そこまで表情に出やすいとは…。そんな自分に悩みながらも、私は足を進めた。
園内に入ると、明るい音楽が聴こえてきて、小さいころの思い出が頭をよぎった。
鈴
ここ水族館もあるんだって
あなた

水族館!?

鈴
うん。行きたい?
あなた

行きたい!

勉強漬けだったからか、多少子供っぽくなってしまった。勉強漬けの日が続いたからだろう。
鈴
今日はなんか、甘えてくれるね
あなた

なんで嬉しそうなの…

鈴
なんでって、あなたちゃんツンデレのデレにならないし
あなた

え、私ツンデレなの!?

鈴
普段は尖ってるけど、時々デレってなるし
解説をする鈴の顔は、とてもふにゃっとしている感じだった。顔が緩んでる…まあ、もう慣れてしまったのだけれど。
繋がれた手とは反対の手で、鈴にデコピンをくらわした。
鈴
あなたちゃん、デコピン強いよー
あなた

うるさい…

鈴
あれ、照れてる?顔赤いよ?
あなた

うるさい!

そして私は、鈴の手を引いてアトラクションへ向かったのだった。
道の端にあるベンチに腰を下ろし、ペットボトルの水を喉へ流し込む。鈴の帰りを待ちながら、スマホを手にした。
画面上部には15:27という表示。ここに入ったのは13:35だったけど、もう2時間も遊んでいた。
あなた

ぶっ通しで乗ってたなあ…ひゃっ!?

ぼんやりと画面を眺めていると、首に何か冷たいものが触れた。
冷えた首に手を当て、後ろを振り返る。そこには目が痛くなるほど、輝く笑顔の彼がいた。
鈴
驚いた?
あなた

驚いたって…心臓止まりそうだったよ!

鈴
絶叫系乗りまくったのに?
あなた

ドッキリに弱いの!

怒る私を見ても、彼は一切笑顔を絶やさなかった。逆に笑顔になっている気がする…。
鈴
はい、アイス
あなた

お、ありがと

鈴に二つのアイスを差し出される。イチゴ味とチョコ味。私は右にあった、イチゴ味を取った。
冷たい袋を開けて、中から棒アイスを取り出す。冷気が手元に落ちてくるのが、ひんやりして気持ちよかった。
あなた

猛暑日のアイスは格別ですな

鈴
ですな
2人ベンチに並んで、アイスを食べた。水なんかとは比べ物にならない。
そんなことを考えていると、不意に水族館のことを思い出した。
あなた

これ食べたら、水族館行こうよ

鈴
んー、だね。時間もちょうどいいし…
あなた

時間?何かイベントでもあるの?

鈴
あっ…な、無いよ!うん!普通の水族館!
あなた

…怪しい

鈴
怪しくない!怪しくない!
全力で否定する姿が、いかにも嘘くさい。これは何かあるんだろう。
疑問を抱えながらも、私たちはアイスを食べ終え水族館へ向かった。
あなた

ここって何がいるの?

鈴
イルカとかはどうかな
あなた

イルカ見たい!

地図付きのパンフレットを手に、私たちは足を進めた。
イルカの水槽は奥の方に示されていて、道中に色々なものが見れた。イルカが目的だったけど、奥にいてくれたお陰で巨大水槽も見れたし。
あなた

すごい!サメいるよ!エイもいる!

鈴
いや、あれマンタじゃない?
あなた

え!?エイじゃないの?

鈴
マンタだよ!
あなた

いいもん、ググるから!………マンタだった

鈴
俺の勝ちー!
その後彼に聞かされたのだが、エイとマンタは口の位置で見分けるらしい。…恥ずかしい。
なんだかんだで、私たちはイルカの水槽まであと数十メートルの地点まできた。
すると、横を歩く鈴が声を上げた。
鈴
アザラシ!
あなた

アザラシ?

鈴が声を上げるのは珍しい。私もアザラシは好きなので、彼の視線の先に目を向けた。
あなた

餌やりやってるね

愛嬌のある顔に引かれ、私たちは人集りへ混ざった。
ガラスの向こう側には、マイクで解説をする飼育員さんと、数頭のゴマフアザラシ。子供のアザラシもいて、更に心が和んだ。
鈴
俺、アザラシ好きなんだ。あの丸い感じが特に!
あなた

赤ちゃんアザラシ可愛いよね!

鈴
ね!…可愛いなあ
鈴が見たそうにしている感じだったので、私はこのフロアにしばらくいることにした。
今見てる水槽の壁一枚挟んだ隣には、小さいペンギンがいて、反対側にはセイウチがいるこのフロア。
改めて思ったのが、日本を出なければ会えない動物たちを見れる水族館や動物園は、とても貴重な場所だということ。
ラッキーなんて気持ちが湧く。と同時に、動物たちが可哀想に感じられた。
あなた

自分の故郷がわからないって、どういう感じなのかな…

鈴
…あなたちゃん?
ポツリと呟いた言葉は、周りの誰にも──鈴にさえ届かなかった。
イルカたちは、水槽というより専用のプールの中にいた。泳いでいるのは5頭くらい。灰色に似た光を反射する細い体は、いつ見ても綺麗だ。
鈴
イルカ触れるらしいねー
あなた

ほんと!?触る!

鈴
あ、でもキスはダメだよ?
あなた

なんで?

鈴
俺がいるから
あなた

なっ…!

台詞的にはキュンとしたし、なんか嬉しい。しかし今してる笑った顔は、いつもの無邪気さを孕んだ笑顔ではない気がした。
イルカと触れ合うのは、人生これが初。体験できるのは、輪投げとサインを出すことだった。
飼育員
手を一度叩いてから、斜め右に投げてください
あなた

はい

イルカはプールの真ん中で、水面から顔を出しこちらを見ている。少し広いプールの中心は、ステージにいる私たちからは多少距離があった。
あなた

いくよー

わかるはずもないが、一度イルカに声をかけた。
飼育員さんに言われたように、一度手を叩く。そして輪をしっかり握り、斜め右に向けて投げた。
自分的に高さはあって、少し不安になる。その刹那、いつの間にか潜っていたイルカが水中から飛び出し、投げた輪っかを首に通した。
鈴
すごっ!
あなた

わーっ!

輪を首にかけたイルカは、水しぶきをあげプールの中へ入る。水中の黒い影は私たちの方へ来て、目の前に顔を出した。
飼育員
撫でてもいいですよ
あなた

ほんとですか!?それじゃあ…

少し出ている背中を、優しく撫でる。初めて触るイルカの肌は、同じ哺乳類でも全く違った。
飼育員
それでは、首の輪っかをとって、腕を振ってください
あなた

あ、はい

鈴はさっきから、後ろでずっと見守ってくれている。外した輪っかを彼に預かってもらい、手を振ってみた。
あなた

あっ…

イルカは水中へ戻り、姿を消してしまう。もうさよならだと思うと、声が出てしまった。
そんな時、突然プールから大きな水しぶきが上がり、イルカが空中に飛び出していた。
あなた

手振ってる…

空中に投げ出された体は水の中へ戻り、また私たちの前へ戻ってきた。
こんな感じに、他にもサイン出しを体験した。
水族館を回り、その後にアトラクションを少しかじれば、外の大きな通りではパレードが始まっていた。
空はもう真っ暗。明かりはパレードの台車くらいしかなかった。
あなた

今日、連れてきてくれてありがと

鈴
え?あ、うん!
今日ここに来たのは、本当は鈴から先週くらいに誘われたからなのだ。
…初デートのお誘いなのかはわからないけど。
鈴
これで勉強頑張れそう?
あなた

…今の一言で、一気に現実を見たよ

鈴
あ、なんかごめんね。…でも、リフレッシュ出来たでしょ?
あなた

まあ、それはそうだね。ありがと

鈴
いえいえ。俺はあなたちゃんに会いたかっただけだし
あなた

また恥ずかしいことを…

前から不思議なのが、なぜ「好き」とか「会いたい」と普通に言えるのか。なぜ頭はいいのに、時々アホになるのか。
天然タラシとは、こんなやつのことなのたろうか…恐ろしい。
あなた

あ、最後尾…

鈴
もう終わっちゃうね
最後に大きな台車が見えてきて、盛り上がる反面、寂しくなった。
目の前を通り過ぎると、周囲の人たちも出口へ向かう。小さい子から、私たちと同じくらいのカップルも見られた。
鈴
俺らも行こうか
あなた

うん、そうだね

出口までの距離は、そう遠くない。楽しいことは本当に、早く過ぎ去っていった。
ここを出て家に帰れば、再び勉強漬けになることは間違いない。ため息が出てしまった。
鈴
疲れた?
あなた

ううん、楽しかった。でも、勉強漬けを考えると…

鈴
ああ、そういうことね
鈴はくすくすと笑った。どうせ、こんなやつはとっくに終わっているのだろう。
へーへー。私はまだ終わらせられないバカですよーだ!
鈴
…大学かぁ
あなた

え、急にどうしたの?

鈴
いやあ、あなたちゃんと別々になっちゃうの悲しいなって思って
あなた

あ、そういうこと。……え、私と?

鈴
うん
あなた

みんなじゃなくて?

鈴
あなたちゃんだけ
なんだか、一番言われたくなかったかもしれない。
学力の差もあるし、鈴と私はもちろん別々の大学へ行く予定。なんか寂しいな、なんて自分でも思ってたのに、一番離れたくない人に言われるとは…。
あなた

…会えばいいじゃん

鈴
え、なに?あなたちゃん
あなた

っ…やっぱなんでもない!

鈴
わっ!?ちょ、待ってよー!
付き合ってるなら、会えばいいじゃん…バカ。
恥ずかしくなった私は、繋がれた手を解き走った。
鈴
あなたちゃん、待ってって!
最後までバタバタしたまま、デートは幕を下ろしたのだった。

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