それから球技大会の仕事の内容と全体の流れの説明を始めた。
「ええーっとー、まず最初に自分が出る競技はなるべく早く私の所へ伝えてきて!シフト考えるから!!伝えなくてシフトと競技時間被ったらたいへんだから!!!!」
ゆめ部長、うるさいよ。
「仕事の内容は単純で、まず球技大会の開会式のマイク設置と生徒招集。次に大会中の生徒、体育委員、先生、生徒会役員の呼び出し。これ重要。落とし物の連絡、それから大会結果の放送…だね。結果放送の資料は校門前の本部にトランシーバーで伝えてもらうから後でトランシーバーの使い方も説明します、ちゃんと聞いてなきゃ出来ないよ、アレは。うん。」
「まぁ最終手段は走って本部まで行く、だよねー!去年なんか本部席にいた生徒会役員がトランシーバーの使い方間違ってて繋がんなくてあなたちんたら、本部から放送室まで5往復位してたもんねー?」
「あれはしんどかった。自分の種目出る時からもうヘトヘトになっちゃって…」
大変だったけど、すごく楽しかった。
「じゃあ次は実践だね!大会結果は次々と来るから臨機応変にねー!」
「あ、そうだ。いっぱい喋ると思うから……」
そういって袋から持ってきたプラスティックの籠の中にドバドバとそれを入れていく。
「わぁ、のど飴…!」
フルーツのど飴とソフトキャンディを買ってきた。ソフトキャンディはおやつ。
「わぁーい!毎年恒例あなたちんの心が虚しくなる差し入れだーい!りんごのど飴取ったりー!」
「一言二言余計だよねゆめちゃん…」
私はいちごののど飴にしよう。
赤いいちごのパッケージを取ろうとした時、ふと視線を感じた。
横を向くと、そこには佐藤くんがいた。
「あ、佐藤くんもどうぞ?」
佐藤くんは、微動だにせず私の方を凝視していた。
「あ…、あの、佐藤…くん?」
とても居心地が悪い。
「あなた先輩ってさ、」
少し顔を近づけてくる。
「彼氏って、いる?」
なんだいきなり。失礼じゃないかなぁ?!
今は、今は……
「いない、けど…」
「けど?」
「……。」
「まぁいないならいいや!よし」
よし?
「はぁーい!発声するよー!!」
「はーーい!」
元気に返事をして私から遠くなる佐藤くん。
なんだか腑に落ちない…。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。