私が目を覚ました時は、手も足も動けないように鎖で縛られていた。
私が警戒しながら周りを見渡すと…
私の前に王が立っていた。
王は私をしばらく見つめてから、言ってきた。
『お前も本当の目的を知ってしまったか…。何故、探った?』
私が今まで見たことの無い顔だ。
少し怖い…。
私は王に対して、初めてそう思った。
『なんのことか分からない』
私は知らないふりをしてみた。
けど、通用しなかった。
『知らないふりをするな!本当のことを言え!』
私は、いつの間にか静かに笑っていた。
止めようとしても、止められない。
王はそのことに気づいてないようだった。
私は教える代わりに条件を付けることにした。
『じゃあ、その前に聞かせて。私もちゃんと答えるから。これから、私をどうするの?』
少し間はあったが、王は答えてくれた。
『実験道具として使う。でも、大丈夫だ。怖くない。実験道具にする前に注射を打ってやるからな。心を失い、何も抵抗の出来ない状態にしてやる。次はお前の番だ!』
もう、準備は出来た。
『分かった。私も答える。…私は復讐をする為に資料を探った。それだけ。それ以外の目的は無い。これでいい?もう会わないと思う。さよなら…』
その瞬間、私はその場から消えた。
これは、転移魔法だ。
行きたい場所を頭で浮かぶとそこへ着く。
私が浮かべた場所、それは…
謎解き迷路だ。
そこに行く理由、それは、琉とお別れの挨拶をする為だ。
回復してあげたいけど、もう時間が経ちすぎていて、無理だ。
だからせめて、お別れだけでも告げに行きたい。
その後は、ちゃんと日本に戻る。
でも、正直、成功するかどうか不安だ。
失敗した後のことを考えてないから。
けど、私はやる。
本物の蘭が「貴方なら出来る」と言ってくれた。
私はそれを信じる。
そして、抜け出してみせる!
この意味のわからない世界から…。
それに、もう復讐はいい。
今の私じゃ、王には敵わないって分かったから。
だからこそ、私は力をつけなければならない。
王が日本を襲ってくる可能性があるから…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。