淡い期待は儚く散った。
何となく分かってはいたが、多少なりとも 胸は痛む。
もちろん、晴樹に責任はないのだが、この憂鬱を彼にぶつけてしまいそうになる。
…“好きな人”はいるけどね。
と内心思いながら、「晴樹は?」と返信をする。
他人の恋愛に興味があるわけではないが、一応 幼馴染だ。
知っていて損は無いだろう。
何かあったら相談にも乗ることが出来るし。
不覚にも、返ってきた彼の言葉に ほっとしてしまう。
会わないうちに 大人っぽくなっていたので、“階段”を登ったのかと思っていたが、案外そうではないらしい。
同じクラスの子だろうか。
それとも、部活が同じとか?
色々と考えを巡らせながら、返信を待つ。
今思えば、幼馴染の恋愛事情を聞くのは、これが初めてのような気がする。
私が高校に入るまで、お互いそういう相手はいなかった。恋人がいなくたって、二人で過ごす時間は 楽しいものだったからだ。
不思議だった。
いつの間にか、知らないことが増えて、顔を合わせることも少なくなってしまったことが。
あんなにも、大切な友人だったのに。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。