椅子に座ったまま背伸びをしながらその言葉を発した。
美子さんが不安そうに俺の顔を覗き込んだ。
イマイチ状況を掴めていなさそうな様子だ。
それもそうだ。一般人?にはこういう出来事は無縁だろう。
最後の仕上げと言わんばかりにパソコンに向き合いながら詳細を説明し終わると
グスン
すすり泣くような声が聞こえた。
バッ
俺は慌てて美子さんの方へ体を振り向かせると案の定美子さんが泣いていた。
何かやからしてしまっただろうか。それとも復讐の仕方が軽すぎたのだろうか。
この仕事は依頼人が少しでも気が晴れなければする意味が無い。もし美子さんの気持ちが少しでも楽になっていないのであればまた計画を練り直さなければならない。
ガシッ
そんなことを考えていると美子さんが俺の手を両手で力強く握った
美子さんの顔が複雑な顔をしている。
きっと...美子さんは普通の...仲が良く楽しい夫婦になりたかったのだろう。でも...その願いは叶わなかった。でも本当は...そう思っているから...まだ少しでも夫のことを信じていたかったからここで涙を流しているのではないか...。
俺は美子さんの流している涙の意味をそう受けとった。
美子さんはそれから暫く泣いていた。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!