第11話

day 10
60
2017/12/11 00:52 更新
乃愛流とルシフェルは新大阪行きの新幹線に乗っていた。

「…いい加減、機嫌なおしてよ。」

乃愛流がルシフェルを横目で見る。
不機嫌なルシフェルはうんともすんとも言わない。
ことの始まりは2日前に遡る。
「楽しかったね。」

「そうだな。温泉もよかったが、料理もうまかった。」

草津温泉からの帰りの電車の中で、2人は楽しく旅行の感想を語りあっていた。

「おいしかったよね。かになんか久々に食べたしなぁ。…そうだ。言い忘れてたけど、明後日のお昼には岐阜に向かうからね?」

これがまずかった。
ルシフェルは乃愛流を見て、ものすごく嫌そうな顔をする。

「明後日の昼?俺は1週間くらい、ゆっくり休む予定だったんだが。」

「やりたいことリストの3つ目、お墓まいりに行こうと思って。」

「そんなに急ぐ必要ないだろう。」

「私の体調はいつ悪くなるか、わかんないじゃん。」

「だからって急すぎる。」

「私のやりたいことに付き合うはずでしょ。」

ルシフェルは契約のことを出されて何も言えなくなったのか、黙ってしまった。

「…言い忘れてたのはごめん。」

ルシフェルは何も言わなかった。
そして、ぎくしゃくした関係のまま、2人は乃愛流の両親の墓がある岐阜県に向かっていた。

一言も言葉を交わさないまま電車を乗り継いで、予約したホテルにチェックインをした。
部屋に入ると、ルシフェルはさっさとシャワーを浴びにユニットバスへ行ってしまう。
乃愛流はベッドに座った。
胃がズキズキと痛む。
旅行の疲れとルシフェルとの関係をこじらせたことによるストレスのせいで、体調を崩しかけていた。
かばんの中から薬を出して飲む。
その時、ユニットバスの扉が開く音がして、ルシフェルが出てきた。
乃愛流もシャワーを浴びようと、着替えを持ってユニットバスに入った。

このままの状態でクリスマスを迎えたら、どうしよう。

そう考えた瞬間、吐き気に襲われた。
すぐそばにトイレがあったので、便器に顔を突っ込む。

「うぇっ…。」

トイレの水を流す。
その音で扉が開いたことに気づかなかった。
背中をさすられる。
口もとを手で押さえながら振り返ると、ルシフェルがいた。

「だから言っただろう。急すぎるって。体調崩したんだろう?」

「…半分くらいルシフェルのせいだけど。」

「悪かったな。」

吐き気はいつの間にかなくなっていた。
ルシフェルが力を使ったのだった。

「もう大丈夫。」

「そうか。」

ルシフェルが乃愛流の体を気遣ってくれていたことを知って、乃愛流は嬉しくなった。

「ありがとう。」

「気分悪くなったら、呼べ。」

そう言って、ルシフェルは出ていった。
乃愛流はささっとシャワーを浴びて、ユニットバスを出る。
ルシフェルはベッドの上で持ってきた本を読んでいた。
乃愛流に気づいて、視線を向ける。

「具合は?」

「大丈夫。吐き気は治まったし、胃の痛みも和らいだ。」

「何か食べるか?」

「ううん。もう寝るよ。」

「わかった。」

ルシフェルは本を閉じて、電気を消す。
乃愛流もベッドに横になり、目を閉じた。
翌朝。

ホテルを急いでチェックアウトして、バス停に向かった。

「山の方だから、1時間に1本とかしか無いの。」

「なぜ山に墓を立てたんだ…。」

「仕方ないじゃん。実家が山の中なんだもん。」

2人がバス停に着くと、乗る予定のバスもやってきた。
バスに乗ること2時間。
バスから降りて、さらに歩くこと20分。

「やっと着いた。」

「来るだけで一苦労だな。」

「でも、ここから見える景色で少しは癒されない?」

ルシフェルは乃愛流が指差した方を見る。
そこには、空と街の壮大な景色が広がっていた。

「確かに。夜景なら、なおさらだろうな。」

「そうなんだけど、夜までいるとバスがないんだよね。」

乃愛流はそう言いながら、墓の掃除を始めた。

「手伝う。」

「ありがとう。」

墓を洗って、その周りの雑草を抜く。
最後に花を供えて、線香を焚き、手を合わせた。

「お父さん、お母さん。今日で最後です。…産んでくれて、育ててくれて、ありがとうございました。」

その瞬間、乃愛流を風が優しく包む。
両親が抱きしめてくれたように感じた。
乃愛流は微笑んで、立ち上がった。

「帰ろっか。」

「ああ。」

バス停まで2人で並んで歩いていった。

12月25日まで、2週間を切った。

プリ小説オーディオドラマ