ルシフェルが部屋へ帰ってくると、テーブルの上にアルバムと手紙が1つ置いてあった。
ルシフェルへ
今までありがとう。
散々連れ回してごめんね。
ルシフェルと過ごした毎日はとても充実していて、おもしろくて、楽しかったです。
あの時ルシフェルに出会っていなかったら、今頃私はどうなっていただろう、って何度も考えました。
ルシフェルがいてくれたから、私は幸せな最期を迎えられます。
私を見つけてくれて、ありがとう。
私を生かしてくれて、ありがとう。
私を救ってくれて、ありがとう。
そばにいてくれて、ありがとう。
感謝してもしきれません。
うまく言葉にできないけれど、私のこの気持ちがルシフェルに届きますように。
また、来世とかで会えたらいいね。
あと、私のこと、忘れないで。
ルシフェルまで私のこと忘れたら寂しいし、悲しいから。
ずっと、覚えていて。
乃愛流
ルシフェルは手紙を読んで、気づいた。
「ああ、ようやくわかった…。」
ルシフェルの頬を涙が伝う。
この感情は、胸が痛むこの感情は。
「悲しみ」だ。
「はっ…。人間に情などわかないと思っていたのだがな…っ。」
ルシフェルはしんと静まり返ったその部屋で、静かに泣いた。
ようやく涙が止まると、ルシフェルは最後に撮った乃愛流の写真を印刷して、アルバムの最後のページに貼り付けた。
アルバムに手紙を挟み、それを持ってリビングを出る。
玄関の扉を開けようと取っ手に手をかけた時、ふいにリビングの方を振り返る。
そこに乃愛流がいるような気がした。
ルシフェルは優しい笑みを浮かべた。
玄関の扉を開けると、雪が舞う中、朝日が昇り始めようとしていた。
ルシフェルは黒い翼を広げ、空へ飛び立った。
私は突然、未来を奪われた。
そんな私の前に現れ、救ってくれたのは、悪魔だった。
これは、私と悪魔の、軌跡と奇跡の物語。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!