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第17話

未来 〜 独り占め
チャクロside
トビ
トビ
なんでお前が偵察隊に入ってるんだよ!
チャクロ
チャクロ
えへへ〜
正直、俺も選ばれるとは思ってなかったけど、外の世界を見ることができるのは嬉しい。
トビ
トビ
あーあ…トラブルが起こらなきゃいいけど
トビ
トビ
というか、スオウはよくサミを選んだよなぁ
サミ
サミ
お兄ちゃんは私を信用してくれてるの!


サミはそう言って、自分の胸を叩く。


トビ
トビ
それにしても、大きいな…
サミ
サミ
建造物まであるね

今回流れてきた島は、約半年ぶりの島で、陸には大きな建物があり、どこか泥クジラに似ているようにも思える。

サミ
サミ
楽しみだね!

サミが笑顔で俺に言う。

チャクロ
チャクロ
うん!
俺たちは期待に胸を踊らせながら、その島に上陸した。




















マソオ
マソオ
おい、チャクロはどうした?
サミ
サミ
あれ?ほんとだ、どこ行ったんだろう
マソオ
マソオ
ったく!単独行動は禁止だとあれほど…
チャクロ
チャクロ
マソオさーん!
マソオ
マソオ
コラァッ!チャクロ!!てめぇどこに…
チャクロ
チャクロ
それよりマソオさん!大変なんだ!
マソオ
マソオ
ああ?!…あっ!しかもお前、モノ拾って来やがっ…
チャクロ
チャクロ
違うよ!モノじゃなくて、人だよ!!
マソオ
マソオ
ああ?人だ?




「「「………!」」」








ズサザザッ!!




マソオ
マソオ
お、お、おい…!マジかよ!
ギンシュ
ギンシュ
人…初めて…
チャクロ
チャクロ
突然倒れてしまって、怪我もしてるんだ!放って置いたら死んじゃうかもしれない!


俺が必死になってそう言うと。


ギンシュ
ギンシュ
…どうする?一旦島に戻るか?
トビ
トビ
でも…
マソオ
マソオ
人命が優先だろ…偵察は切り上げだ。戻るぞ



マソオさんの言葉に皆、渋々ながら頷いた。









チャクロ
チャクロ
サミ。この服、着せてあげてくれない?彼女のだと思う
サミ
サミ
うん


サミに服を渡すと、横たわる彼女とサミに背を向けて、砂海の果てを眺めた。


サミ
サミ
この怪我、だいぶ時間が経ってるみたい
チャクロ
チャクロ
そっか…


胸にあった傷は確かに深かった。

だけど、既に塞がっていて、その傷が原因で倒れたとは言いがたい。

チャクロ
チャクロ


…彼女が情念動で、襲ってきたことは言わないでおこう。

きっと彼女だって、俺が急に現れたからびっくりしたんだ。




ポツ…ポツポツ



チャクロ
チャクロ
あ、雨…
サミ
サミ
ほんとだ!晴れてるのに!



雨は泥クジラの貯水池に蓄えられ、私たちの大切な生活の糧になる。

また雨天は吉兆と言われていた。



だんだんと近づく泥クジラの真上に、大きな虹がかかっていた。

チャクロ
チャクロ
虹まで…!
サミ
サミ
きっといいことがあるね!


うん、そうだね。

俺はサミの言葉を強く共感した。


この少女が、私たちに誰もが知らない未来を連れてきてくれるのかもしれない。

私たちは強くそう思った。


















オウニside




オウニ
オウニ
……

すっかり慣れたことも、この頃はとてももどかしくなる。

特別何がというわけでもないが、ふとした瞬間にそう思う。

それがどんなに些細なことでも、それがどんなに今まで面倒だったことでも。


スオウ
スオウ
恩赦です。出なさい


そんなことを考えていたら、いつの間にかここへ近づいてきた人たちの足跡さえも聞こえていなかったようで、俺はおもむろに目を開ける。


俺たちは次々と立ち上がり、僅かだけ日の漏れるその場を後にした。




ニビ
ニビ
これはこれは次期首長様が直々にお迎えとは
アイジロ
アイジロ
あぁ、身体いってぇー
キチャ
キチャ
眩しいぃぃ!

俺が先頭を歩き、仲間たちが口々に監獄から出た感想を述べながら、地上へと階段を上っていく。

スオウ
スオウ
次からは馬鹿げたことは繰り返さないように。限られた時間をもっと大事になさい

叱るような口振りで、スオウはそう唱えた。

キチャ
キチャ
大事?

キチャは、そんな言葉に納得いかない、という態度でスオウを侮蔑した。


ニビ
ニビ
俺たちには同じなのー。地下も。船も。


そうだ。

今までもそうだった。

これからもそうだ。

限られた時間なら、尚の事。


狭くてちっぽけなこの船に、違うも何も無い。


そう思い続けている。


ニビ
ニビ
こんな小さな世界じゃどうしたって同じだよ。無印のあんたらは先が長いからこんな泥船でも大事かもしんないけどさ


だけど、少なくとも何かひとつくらいは違うと感じている。

俺は、それが何かを分かっているようで、知らない。

スオウ
スオウ
先に伝えておきますけど…今日流れ島で人が見つかりました
オウニ
オウニ
……
スオウ
スオウ
そのことにはあまり過剰に反応しないように。ただでさえあなたたちは…
ジキ
ジキ
おい!ほんとうかよっ!!

俺は階段を上っていた脚を止め、振り返る。


ニビ
ニビ
人がいたのか?『外』に!!

信じられないと思いつつも、それ以上に歓喜の表情でスオウに食い付く。

ジキ
ジキ
やっぱり外の世界はあったんだ!!
ニビ
ニビ
人が他にもいる、巨大な別世界が…!
スオウ
スオウ
そ、それはまだ…っ

ドンッ!!!






パラパラ…









オウニ
オウニ
俺たちは出ていく




仲間や、スオウ、記録係が俺に注目する。




オウニ
オウニ
砂の海の外に別の世界があるなら


どんな世界なんて今は知らない。

最初からやっていけばいい。

俺たちは自分で答えを見つけに行く。

誰がなんと侮ろうと俺たちは…


俺は、砂塵の先の世界に手を伸ばす。



オウニ
オウニ
こんなちっぽけな船なんか、捨ててやる
キチャ
キチャ
オウニ!!
ニビ
ニビ
そうだっ!!
ジキ
ジキ
次期首長殿、その人間は今どこにいんだよ?
スオウ
スオウ
……言えません
オウニ
オウニ
そいつには頼るな



頼ったところで、誰が教えてくれる?

教えてくれたなら、既に答えはあるんだ。


答えがないなら探しに行けばいい。

そんなにこの船が好きか。


そんな執着、俺にはない。

俺には仲間がいればいい。





ニビ
ニビ
オウニ!待ってくれよ!





俺は上っていく。

ここに足りない仲間の元へ。



世界がどうとか、今はそれを捨てていた。


ひどくやつれてないか、もしくはちゃんと起きているのか、本当はそれだけしか思えていなかった。


だから足早になる。

後ろの仲間を置いて行く。



本当にすっかり慣れたことが、もどかしくなった。



あいつを不安にさせるなら、あんな監獄、入りたくもなくなる。

この時そこまで考えていたとは言えないが。




砂混じりの空気が身体全体を包み、流れ込む。

外は眩しい。



俺たちは、雨が降ったおかげで虹がかかり、釈放となった。



雨…か。






オウニ
オウニ
泣いてないと、いいが…





蒼い空が眼前にひろがる。

雨の名残も何もない、快晴の空があった。


それでも脚は止まらない。

俺は迷わずヒゲ広場へと進んだ。


キチャ
キチャ
オウニーー!


独り占め…なんて、柄じゃない。

だが、今は来ないでくれと願っていた。



























思っていたより、すぐに見つけた。

やはり、アジトにはとどまっていなかったようだ。

ヒゲ広場の壁の前で、膝を抱えて座るあなたに近づく。


オウニ
オウニ
あなた…
あなた
……遅かったね

あなたの前に立って名を呼ぶと、優しい声でそう言った。



オウニ
オウニ
長く待たせた
あなた
うん…何週間たった?
オウニ
オウニ
二週間…たった
あなた
うん、長かったなぁ


顔を上げず、ずっと膝を抱えたままのあなたに違和感を覚える。


オウニ
オウニ
あなた…?
あなた
なぁに?
オウニ
オウニ
…怒ってるか?
あなた
ううん
オウニ
オウニ
…じゃあ顔を見せてくれよ
あなた
いやだよ


どういうことだ?


オウニ
オウニ
なぜ…?
あなた
…今、顔あげたらダメだから
オウニ
オウニ
どうして?
あなた
どうしても


やはり、怒っているのか?

だが、俺だって長らく見ていなかったあなたの顔を見たい。

俺はあなたの前にしゃがみ、その前髪をかきあげる。


あなた
こらっ

そう言って顔を背けたあなたの頬を、グイッと持ち上げて、目を合わさせる。

あなた
あっ…
オウニ
オウニ
おい、なぜ顔を合わせな……ぁ…



俺は固まってしまった。

なぜなら、あなたが俺の顔を見た瞬間、ポロポロと涙を流しだしたからだ。

あなた
っく…うぅ…
オウニ
オウニ
あ…ど、どう…

どうしたらいいのか…。

俺は動揺して、とりあえず手を離した。

だが、今度はその手のやり場に困り、不自然に首の裏を触ったり、あなたに触れようとしてやめたりしてしまっている。


オウニ
オウニ
っ…あなた…無理にむかせて…その…
あなた
ひくっ…ち、ちがう…オウニが…
オウニ
オウニ
…?
あなた
オウニが…そこに、いるから…、かおみたらないちゃうって…っ、うれしくてっ…
オウニ
オウニ
…っ
あなた
だから、かおみたくなかったのにぃぃ…っ

なんだ。

この感情は。



ウイジゴケがザワザワと動き出した。


あなた
ふふっ、あんしん…した…っ

涙を拭ったあなたは、ようやく笑った。

俺が一番願っていた、あの顔だ。

オウニ
オウニ
よかった…
あなた
えっ?
オウニ
オウニ
いや、なんでもない
あなた
オウニはそればっかり…!まったくー

そう言いながらも、嬉しそうに顔を綻ばすあなたに、俺も知らぬ間に微笑んでいた。







あなた
オウニ、島と人のことは聞いてる?

あなたは泣き止んだ後、真剣な声色で俺に問いかけた。





オウニ
オウニ
ああ
あなた
島に行くの?
オウニ
オウニ
行く
あなた
なら、手伝う
オウニ
オウニ
おい…お前は…
あなた
ひとりで行くつもりなんでしょ?なら、ついて行く
オウニ
オウニ
…。わかった

正直、俺が行くといえば、何となくそう言いだすとは思っていたが、危険が伴わないわけでもない。

そして、まずやらなければならないことがある。






オウニ
オウニ
まず、その島の人間を手に入れる
あなた
多分、今は首長か長老会と一緒かな
オウニ
オウニ
手に入れるのは…俺は、なんとかできる
あなた
…「俺は」って言ったのは、一緒にいるのが長老会だった時のことを心配してるの?
オウニ
オウニ
…ああ


あなたを連れていくとして、その人間が長老会と共にいたとする。

要はそこからかっさらうわけだが、あなたは長老会に9年前の『借り』がある。

俺が危惧しているのは、それを裏切る行動をさせるのは、あなたとしては避けたい所だと考えているからだ。

あなた
…いいよ。それが裏切りだなんて思ってない
オウニ
オウニ
あなた
あなた
大丈夫。ちゃんとあなたの助けになるから
オウニ
オウニ
…頼んだ
あなた
うん。…行こう
オウニ
オウニ
ああ

俺が手を出すと、あなたはそれをしっかりと握り返し、立ち上がった。






あなた
…尋問室の気がする
オウニ
オウニ
……中央塔の上まで行くぞ
あなた
わかった


相変わらず、あなたは俺の先を読む。

直感は当たるし、それで俺を説得させる。

彼女の意思は固い。



だが、それ以上に俺は強く思っていた。

握った手の小ささと、泣き顔は俺だけが知っていればいい。

俺の動揺は、あなただけが知っていればいい。


あなたへの感情は、俺が知っていればいい。




だが、決してあなたには教えない。

お前が俺に思っている以上に、俺はあなたに会えたことが、とても嬉しかったなど。









空は紅く染まり始めていた。