第92話

【歌詞】愛のち憎しみのち
22
2018/01/25 10:37
ケンカするほど  仲がいい
そんな言葉  何処かで聞いたことあるね
あれ意外と  的確なとこ突いてるね 僕はちょっとだけ笑ってみる


愛なんて 素敵な言葉が  似合うほどよくできたものじゃないけど
確かに僕ら  想いあったのに  そんなことすら過去の話なの…

君がどうとか 僕は違うとか 互いに理解してもらおうとするばかり
どっちだって 理解しようとか 思いやれなくて…投げつけて 放つ乱れる言葉づかい
構っていられるほど  正気じゃいられなくて… ただすべてを吐き出してさ

どうでもいいくらいの小さなすれ違いは  そんな僕らを引き離した


空が薄暗く  淀み始める
先を見れば  その奥の方から立ち込めた雨雲が 青い空を包み始めていて
「これはひと雨降りそうだな…ちょうどいいか」 傘はいらない 頭でも冷やそう

これほど君を憎いと思ったことはないでしょう
壊れてしまいそう  すべてを賭けるくらい  君に捧げてきたのに
これほどに君を憎いと思ったことはないだろう
好きだった笑顔さえ 今は脳裏に浮かぶだけ  ただ苦しくなるんだよ…


愛の対義語は  憎しみじゃないという
誰かの残した  名(な)のある言(こと)
愛の対義語が  憎しみじゃないなら…
愛の反対は    なんていうんだよ…  

嗚呼 君ほど愛せた人はいないでしょう
張り裂けそうで  でもこの痛みすら  愛してしまって
嗚呼 君ほどに愛せる人はいないだろう
想うことなど煩わしいと 孤独を選んだ僕が 唯一想った人

いつの間にか過ぎた雨雲  知らずの内に止んだ雨に濡らされて…
雨のにおいが溶けた  黒い髪先からひとつひとつ 小さな滴が頬伝う
気づいてしまった 雨あがりの空  息も詰まるほどに綺麗な空
まるで  僕らのようだと――…

これほどに愛しいと思えた君を憎めたのは
哀しくなるほど すべて捧げた”愛”を  捨てられた気がしたから
あれほどに憎んだ君をまた愛しく思えるのは
憎んだぶんの空間(じかん)をうめるほど 
強くぎゅっと 「もう離せない…」と  




抱きしめた腕のなかで君が笑うから…


















愛を捧げた君だからこそ
すべてを賭けた君がそれを捨てようとするのは嫌だ

愛の対義語をいまだ 見いだせないでいるが
答えは知らなくても  ……いい気がした








プリ小説オーディオドラマ