第5話

ep.5 サンタの仕事
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2017/12/11 09:39
その困っている子供とやらのところに向かっている途中、暫くたわいのない話をしていた。

この仕事はずっとやってるのかとか、
クリスマスだけなのかとか、
思いつくままに質問していった。
蒼太
へえ、そっか
困っている子供の位置はトナカイが分かるのか
ふむふむと頷き、
続いて、トナカイは雄か雌かを聞こうとしたとき、
ふと視界に映った姿にその質問は飲み込んだ。
蒼太
あっ!ケイタ!
視界に捉えたのはケイタの姿だった。
次に隣に女の子がいることに気付き、
実はこの前アヤと付き合い始めたと聞いた蒼太は、
勿論隣の女の子はアヤだろうと目を凝らした。


しかし、隣の女の子はみたこともない女の子だった。
まさに清楚系女子といった見た目で、ポニーテールに括った髪が歩くたびにユラユラと揺れている。
最初は妹かなんかかと思ったが、次の行動で簡単に打ち砕かれた。


ポニーテール女子がケイタの腕に絡みつき、
路地裏でキスをし始めたのだ。


思わず声が出そうになると
楓がすかさず止めに入り、
人差し指を自分の口に持っていき、シッーと言った。


その場をトナカイが通り過ぎて行く。


暫くして落ち着いてきた蒼太に
楓は目を見て静かに告げる。
蒼太くん、言うの忘れたけど
このことは秘密だよ

私がサンタだということもサンタの存在もバレてはいけないの

ちなみに今この姿は、サンタを信じている小さな子供にしか見えないけど、
私達の声は大人にも聞こえるの
蒼太
そっか…
産まれて初めて生でキスシーンを見た蒼太は
暫く呆然としていた


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つーーいたーー!
やっと着いたその場所は
蒼太の家より大分離れた丘にある立派な一軒家だった。
さあ、行くよ!
楓達を乗せたソリは2Fの窓で止まった。

楓は窓に近づき、手をかざすと
カチャッと音がした。
窓が開くと、手慣れた様に楓は中に入っていった。

オレのときは何で音を鳴らしていたんだろうとかぼんやりと思っていると、
楓が中から手招きをしているのが見えて、
楓に続いて中に入った。



入った部屋にいたのは1人で寝ている子供だった。
5歳くらいだろうか、可愛らしい女の子だった。

楓がその女の子の頭に手をかざすと、
その子の頭の上に記憶らしきものが浮かんだ。
これでこの子が困っていることが
浮かびあがってくるんだよ
記憶の中で分かったのは
女の子はお母さんから貰ったものを失くしてしまったらしい。
とても大切にしていたが、
お母さんに失くしたことを言えなくてずっと心に引っかかっていたのだ。
なるほどね!
ふむふむ…

記憶の中を手掛かりに見ていくと、
この部屋で失くしたみたいね!
よし、探すわよ!
楓をよおし!と言い終わると
肘を下につき、いわゆる四つん這いで床を這い始めた。
蒼太
え?
そこは何かパッと探し出せるもんじゃないの?
そんな便利なものあるわけないじゃん!
早く蒼太くんも探してよ!
一瞬、呆気にとられたが
すぐに蒼太も必死に探し出す

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