第6話

ep.6 女の子の笑顔と約束
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2017/12/11 09:53
どのくらい探したのだろうか。
時間が経つのも忘れて必死に探し出す。

女の子の為に探し出してあげたい、
悲しみから解放してあげたい、
その一心で動く。




ふとおもちゃ箱に目がいき、中を探すと
蒼太
あ、あった!
おもちゃ箱の奥底にあったのは
ハートの形をした石が嵌め込まれた指輪だった。

女の子が失くしたものは指輪だったのだ。

きっとおもちゃ箱におもちゃを戻すときに
女の子の指から外れ、指輪も一緒に入ってしまったのだろう。
わー!蒼太くん凄い!
これは、枕元に置いといてあげよう!
ソッと枕元に指輪を置く。
よし、ソリに戻るわよ!
楓と蒼太がソッと出て行こうとしたとき、
女の子
待って!
その声にビクッとし、恐る恐る振り返ると
指輪を持った女の子が立っていた。
女の子
サンタさんが見つけてくれたんでしょ?
ユリの大事なもの!
蒼太は何て言っていいのか戸惑っていると、
そうだよ、サンタだからね!
今日は素敵なクリスマス!良い一日を!
パチっとウィンクをしてサッとソリに乗る楓に続き、
蒼太も出て行こうとしたとき、
女の子の手が蒼太の制服を掴んだ。
女の子
これ!
ゆりの大事なもの見つけてくれたお礼!
ありがとう、サンタさん!
蒼太は反動的に受け取り、
後ろ髪を引かれつつソリに乗る。

2人を乗せたソリは女の子の家を後にした。
ふと後ろを振り返ると、ジッとまだこちらをキラキラとして見つめてる女の子の姿があった。


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で?さっき何貰ったの?
その声にハッとして握り締めたままだった手を開く。
蒼太
あ、飴玉だ
子供らしいお礼に思わずクスリと笑ってしまう。
あの、ね…
サンタの掟で子供から貰ったものは回収しないといけないの
楓は申し訳なそうに呟く。
蒼太
そっか…
残念だけど、仕方ないな
ほら
蒼太は飴玉を楓に渡す。
女の子から折角貰ったから残念に思ったが、
蒼太は達成感で満ちていた。
蒼太
いやー、久々になんか充実したわ
疲れたけどさー
やっぱり笑顔になってくれると嬉しいな
頑張った甲斐があるっていうか…
自然と笑みが零れる。
手伝ってくれてありがとう、蒼太くん
それで、あのね…
言いにくそうに楓は目線を下ろすが、
意を決して蒼太を見つめて言う。
来年も手伝ってくれないかな?
蒼太
え?
来年もまた会いにきてくれるの?
勿論!むしろ、行きたいというか…
楓は照れを隠すように早々に告げる。
と、取り敢えず来年もよろしくね!
蒼太はその言葉に頷き、
毎年つまらなかったクリスマスが
毎年楽しくなるのかなと考え始めていた。
もちろん、楓と過ごせてラッキーという意味が大半を占めている。


なんだか久々にワクワクしてきた蒼太だったが疲労感もあり、
ふと眠くなってそのままソリの中で瞼を閉じた。


蒼太くん、お休み

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