さっきからなんたらかんたら今の生活に文句たれてるけど、きっと少し前のあたしからすれば、あたしの世界の中に一つしかなかった感情が、蓮音くんを好きになったことで、『喜怒哀楽』それだけじゃなくて、キスシーン見てると胸の中がモヤモヤして泣きたくなる気持ち、どんなに嫌な気持ちにされたって蓮音くんの笑顔見れば全部全部チャラになっちゃう気持ち。あたしの世界に蓮音くんのお陰でたくさんの感情が生まれた。10数年生きてきて知らなかった感情をすべて教えてくれたのは蓮音くんでした。
でもね。出会って一目惚れ〜！って訳でもなかったんだなー。
むしろ、高橋蓮音って男はあたしの世界には不必要な大嫌いな人だった。

あたしが蓮音くんに出会ったのは中学二年生の夏服から合服に切り替わる頃。

日曜日の朝。休日でも家には居場所はない。
行くあてもないまま外出しようとリビングに降りた時誰もいない静寂の部屋に、消し忘れたのかテレビから流れる男性の低い声が響いた。

仮面ライダーやスーパー戦隊シリーズ、いわゆる特撮といわれるものは昔からよく見ていた。
見始めた頃は別に特撮が特別好きという訳でもなかった。
日曜日の朝8時なんて、殆どの家庭は1週間のうちで唯一家族のみんなが揃う時。どこかお出かけしたり、外には出なくとも家族水入らずの時間を過ごしたりするのが普通なのかもしれない。
だけれども、あたしの家に普通なんて求めるなんて無駄だ。日曜日の朝8時なんていつも1人だった。両親は出掛けてる、兄ちゃんは二人いるけど歳も離れてるし、2人とも彼女がいたから家になんていなかった。だから、日曜日の朝は一人ぼっちのリビングで特撮を見るのがいつの間にかあたしの生活の一部になっていた。
『特撮はちっちゃい子が見るもの』
そうやっていう人もいた。うん、その考えも一里あるかもね。あたしも見始めた頃はそう思ってたし。だけど、そういう事を言う人に、

って聞いたら、みーんな口を揃えて

こうやって言うんだ。
みんなすごいね。見てもいないのにガキが見る幼稚なもんってわかるんだ？エスパー？透視能力？
大人って概念に囚われるの好きだよね。なに？自分の中にある変な概念に囚われるのが趣味なの？そんな概念に囚われてばっかで大切なもの見失うような大人なんかより、何にでも興味を持って知識を得ようとする子供の方が何倍もこの時世を生き抜いていく力持ってる気がする。
俺は忙しい忙しいっていうけど、忙しいのなんてみんな同じだよ。忙しいから遊ぶ暇がないんじゃなくて、あなた自身の心の余裕がないから何でも忙しく感じるんじゃない？心の余裕がなかったら周りも見えなくなる。余計にわかんなくなって自分を追い込むことになる。これこそ現代の典型的な悪循環なのかもね。話だいぶズレちゃったけど要は自分のせまーい視野だけに囚われて言動決めたらほんとに見るべきものが見ることが出来なくて自分の人生損するよってことが言いたいわけ。

んー。まぁ、ガキなのは確か。つーか、ガキじゃなくて若いって言ってよ。
でも、偉そうなことは、ガキが言おうと、総理大臣が言おうとそれは変わりないっしょ。
ただ自分よりしただって思ってる人に言われると自分のポリープかポリシーか知らないけどとりあえずそんなもんに反するんだろう。
別にあたしは自分より目上の大人を指図しようなんて1ミリも思わない。
あたしは、自分の概念に囚われて、蓮音くんの事を悪い人だって思い込もうとしてた、大嫌いな人間だって思い込んだお陰で早く気づけておけばもっとたくさん知れた蓮音くんのいろんな表情だったり、癖だったりを知るチャンスを自分で潰してた事を猛烈に今後悔してるの！！
だーかーらー！少子高齢化社会の深刻な我が国のためにもあたしと同じ後悔をして欲しくないの！！
命短し恋せよ乙女だもん！
じゃあ、なんでそんな大嫌いな人間だった蓮音くんに恋をしたかって？
じゃあ、それたお話を戻して旅行記の続きをお話しよう。