一聖「未来!おっはよ!」
次の日の朝、あたしは一聖の元気な声で目を覚ました
未来「…一聖、おはよ。朝から元気だね」
一聖「まあね!それより早くご飯食べよ。終わったら城の中を案内するから」
忙しなく朝食を済ませると、一聖はあたしの手をつかんだ
一聖「じゃあ、唯風。行ってきます!」
唯風「はい。お気をつけて」
唯風はにこやかとあたし達を見送った
未来「唯風は行かないの?」
一聖「他の仕事があるし、今日は2人で回りたいって頼んだの。いこ♪」
一聖は城の中を余すことなく案内してくれた
あたしには教科書では分からないような
初めて見る光景ばかりだった
一通りの案内が終わり、休憩することになった
一聖「はあ、いっぱい回ったね」
未来「ありがとう。すごく楽しかった」
一聖「それならよかった」
すると、唯風がお茶をもってやって来た
唯風「どうぞ。未来、一聖の世話をしてくれてありがとうございます」
一聖「ちょっと!まるであたしが子どもみたいに!」
唯風「違うんですか?」
一聖「もー!!」
唯風「ふふ、ではごゆっくり」
立ち去ってく唯風を一聖は少し名残惜しそうに見送った
未来「唯風は一聖をよく見てるね」
一聖「子ども扱いしてるだけよ。歳はあたしと変わらないのに」
未来「そうなんだ」
一聖「ほんとうに……女どころか大人としても見られないんだよね」
それって…
一聖「ねえ!未来のいた時代はどんな感じなの?」
未来「え?」
一聖「身分制度とかは?戦はまだ行われているの?」
未来「えっと…身分に差はなくはないけどあたしと同い年の子は大体平等かな。戦は他の国ではあるけど、あたしの国ではないよ」
一聖「へー!そうなんだ…」
すると、一聖は大きく伸びをして空を見上げた
一聖「知ってるかもしれないけど…あたしね、生まれ変わったら戦のない平和な世の中で仲間たちや唯風と対等の立場で生きたいの」
未来「…一聖は唯風が好き?」
一聖「うん、大好き。あたしは誰よりも唯風の事が好き(ニコッ」
一聖は満面の笑みでそう言い切った
未来「…大丈夫だよ」
未来を決めつけてはいけないのかもしれない
けど、その願いが叶うと信じたいから
未来「生まれ変わった時には一聖の望んだ世界になるはずだから」
一聖「…ありがとう、未来」
未来「…ねえ、1つ聞いてもいい?」
一聖「何?」
未来「どうして出逢ったばかりの時、一聖達はあたしを受け入れてくれたの?」
ずっと疑問だった
いくら水翔が気を許したとはいえ、そこまで信用できるものなのかと感じていた
一聖「そうね…。水翔が気を許したというのもあるけど、1番はあたしかな?」
未来「一聖が?」
一聖「あたしは触れた時はもちろん、能力を解放すれば触れなくても人の心、記憶を読むことができるの。悪いけどあの時、未来の記憶まで覗かせてもらったんだ。それで、皆に伝えてこの子は信頼していいって判断したの。ごめんね?」
未来「ううん。全然大丈夫」
むしろ、やっと疑問を解消できた
一聖「未来」
未来「?」
そう言うと一聖はあたしの守護石に手を翳した
すると、守護石の一部分が金色に染まった
一聖「あたしは感情を感じ取ったり、記憶を覗いたりしても未来の気持ちすべてを理解することは出来ない。けど、たとえ辛くても小さな幸せが、当たり前のように感じられる幸せがあるはずだから。その事だけは忘れないで」
きっと、一聖は人の心が読めるという能力を
拒まれるのを覚悟であたしにその事を伝えようとしたんだ
未来「分かった。覚えとく」
ありがとう、一聖
貴方のおかけで絶望の中にも必ず幸せがあることを知ることができた
その日は遅くまで一聖と話をし、眠りについた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!