俺は…
物心ついた時から、絵を描くのが好きだった
両親、担任の先生、周りは皆んな、優しい人達だった
俺の背中を押してくれる、大きな原動力だった
中学生になった
美術部に入り、本格的に画家を志した
最初の内は、勿論『 希望 』でいっぱいだった
プロになるための道は、そう単純では無い
それは、当たり前に覚悟していた
本物のプロに指摘され、教わり、
藁にも縋る思いで、必死に、ただがむしゃらに、
絵を、大好きな絵を、描き続けた
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ“ㅤただ、絵が上手くなりたいㅤ”
それだけ、それだけだったのに 。
✎___ 30分後
片付けるかぁ…
その日から、絵を描くのが怖くなった
誰かに酷評されるのが怖くて、筆先が震えるようになった
高校生になった
半ば不安を抱えながら、美術部に入った
やっぱり、絵を諦める事は出来なかった
俺には、『 絵 』しか残されていないから、
画家への道の厳しさを知った
これだけ人生を掛けても、結局は30点に過ぎないのだと
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ㅤㅤ暇 なつㅤ___参加賞
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どれだけ、
どれだけ必死に足掻いたって、無駄だった
指中にタコが出来るまで描き続けた
キャンバスにしがみついて、パレットを握り続けた
飯も、遊びも、何もかも捨てて、描き続けた
なのに…
ここまで頑張っても、駄目なのか…ッ
なんで、なんでだよ…ッ
誰も、誰も認めてくれやしねぇ…ッ
父は、名画家だった
絵だけで食っていける程の腕の持ち主だ
俺は、思わず家を飛び出した
気が付くと、やけに消毒臭く、清潔感のある場所に居た
病院だ 。
退院したとて、全く嬉しくなど無かった
どうせなら、死んだ方がマシだった
こーゆうのは、轢かれて生き残るのが1番ダサい
いっその事、小説の世界みたいに、記憶喪失になってみたい
何もかも忘れて、愛されたい
いつからだろう、承認欲求の塊になってしまったのは _
大好きだったパレットも、
お小遣いを貯めて買ったキャンバスも、
使い切ってよれよれになった絵の具も、
全て捨てた 。
静かな教室を出て行こうとした、その時…
ズ キ ッ
急な痛みと、倦怠感が襲った
苦しさのあまり、その場に倒れた
息苦しく、立っていられ無い
それは、幼少期から患っている、“ㅤ心不全ㅤ”だ
急性心不全が、こうして、稀に襲い掛かる
勿論、教室には誰も居ない
何時だって、俺は独りぼっちだ
神様なんて居やしない
俺に何も与えなかった
俺が何時、何かしたかよ…ッ
誰も認めてくれない
誰も助けてくれない
誰も、誰も……ッ
ㅤㅤㅤㅤ“ㅤ俺は、何の為に生まれてきたんだㅤ”
⤴︎︎︎ 我の好きなY先生
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ⤴︎︎︎ 母
⤴︎︎︎ 学年一の美人生徒の母
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ⤴︎︎︎ 母
⤴︎︎︎ 母
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。