電話のコールが鳴る。4回、5回と。
大抵の人間が1、2 回で忙しいのかなや出れないのかもと考え、諦めるはずだ。
回を重ねる度に、その音は狂気的に感じる。
出ていいよとジェスチャーされた。これでも15年以上一緒の幼馴染なのだ。
大抵のことはわかる。
案の定、心配性の弟が電話に出た。その後ろではヒナやはちの声が聞こえてくる。
GPS等を切ってきたからだろうか、伊江の声は焦りを含んでいた。
そこまで伊江が言いかけると、メテヲに携帯をぶんどられた。
弟の冷たい対応にメテヲ不評。
兄妹や友達以外には冷たい人間なのだから仕方がない。
メテヲはすっと電話を返す。
今、俺はどんな顔をしているのだろうか。酷い顔をしていると思う。
見なくても分かってしまう。
電話を切った。
申し訳なく思いつつも、俺はカフェを出た。
………
……
…
一人、長子会から離脱して。
残った3人は駆けていくルカを見ていた。
一口だけコーヒーを飲み、カップを机に置いた。
早く帰らなければと気持ちが急く。
赤信号に引っかかる度に苛立ちが増す。
父さんが帰ってくるなんて思いもしなかった。父さんが帰ってくるならば義母さんも帰ってくる。
頬が濡れる。
ポツポツと雨音が聞こえる。
少し屋根に入り、メッセージアプリを開く。
5秒もたたずに、ぶっとまた携帯が震える。
それだと、今日の分は大丈夫だが今週もつか怪しいところだな。
商店街ですこし買ってから帰ろう。
画面を切ろうとすると、また通知が来た。
そのメールをみて慌てて顔を上げる。
こんな雨の中、向かってきている…?
ぱしゃぱしゃと水音を弾き、走ってくる音が聞こえてくる。
すっと日奈が伊江の後ろから出てくる。
それに蓮も…
弟妹たちが荷物をかわりに持って、傘もさしてくれる。
…………………
ギャーギャーと騒ぎ始める。
仕方ないと伊江のもってきたもう一つの傘を手に取る。
1人でさそうとすると皆入ってきた。
声をそろえた弟妹たちの反論に眉間にしわが寄る。
相変わらずのブラコンだ。
そう提案すると、「その手があったか!」といそいそと移動し始める。
やっと帰ることができそうだ。
にこりと微笑んで、家路を進み始めた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。