第21話

十八頁目
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2024/06/26 22:29
午後。

俺らは昼食を食べた後に病院に向かった。

すると、霊夜がおもむろにお札を取り出して何かを唱え始めた。

お札って、便利なんだな…。
金森祐治
霊夜?
霖堂霊夜
えっとね、病室の237号室に話していた悪霊が棲みついてる。
六戸類
あ、お札って結構便利なんですね。
霖堂霊夜
そうなのよ。唱える呪文みたいなのを変えれば色々と出来るからねー。
金森祐治
すげー
そして、霊夜が結界に入るための呪文みたいなのを唱えて結界の中に入る。
六戸ルキア
相当広そうですね、ここ
六戸類
確かに。これは気を引き締めなきゃかもね
霖堂霊夜
だねぇ
え、え!?

アイツら3人は割と経験者っぽいけど…俺、居ても良いんかな??

ちょっと不安になって来た。
金森祐治
…なー、俺居ても良いん?
六戸ルキア
まー、遠距離しか居ませんからねー
霖堂霊夜
ま、私は遠近両刀型だけど。
そんなことを話しながら237号室の方に向かい、思いっきりドアを開けた。

そこには……

病室であるはずの空間は禍々しくてポップで可愛らしい、病院の中とは思えない空間が広がっていて、可愛らしいテディベアの姿を模した悪霊と、それめがけて長い茶髪を靡かせてなんか細長い銃を撃ってはポイと捨てている女性がいた。

しかも、周囲には他にも同じ形の細長い銃が持ち手であろう場所が上になり、銃口が地面に突き刺さってるかのような状態で。

あれ?よく見ると俺らと同じ高校の制服じゃね??

そう思っていると…
六戸ルキア
え、江村さんだぁ…
と、ルキアが呟いた。

アイツが噂の江村さんなのか…。

そう思っていたら、霊夜が慌てたような表情に早変わりして、
霖堂霊夜
…まさか、この子…契約を切ることを考えずに脳を神に差し出して…!!
六戸類
え、どういうことですか?
霖堂霊夜
どうやってあの子があんな大量のマスケット銃を誰にもバレずに持ち歩けていたのか、わかる?
六戸ルキア
いやぁ…僕にはちょっと…
金森祐治
俺にもわかんねーよ
霖堂霊夜
だよね。脳を契約に差し出した者は、想像を具現化した物体で攻撃するし、彼女は十中八九脳での契約者だと思う。
金森祐治
は!?チーターじゃねーか!
六戸類
すっごお!
脳って、ハイリスクハイリターンなんだ、想像力が豊かであれば、知識が豊富であれば、どんな武器も戦い方も出来るってことだし。

ただ、契約切った時に機能が失われるってことなら脳死又は死だし、俺全然想像力ねーし…。俺、契約したのが拳で良かったかもしれない。
金森祐治
先客いるし、帰るか?
六戸類
僕、あとちょっとでクリア出来るゲームあるから帰りたい。
霖堂霊夜
結界は結界の主が結界を閉じるか倒すかしないと出れないぞお前らー
金森祐治
うわー!!
金森祐治
忘れてたー!!
六戸類
そうじゃん!
六戸類
うわー、終わったぁ
六戸ルキア
兄さん、祐治先輩、落ち着いてぇ
マジで今の今までそれ忘れてた。2ヶ月前のことだったしそれ知ったの。

俺と類が意気消沈?していると、
六戸ルキア
あっ!クマちゃん、倒せそう?
というルキアの声が。

戦ってた同じ高校の制服のヤツを見てみると、多分何かしらで撃ち落としたであろうクマのぬいぐるみを容赦なく鋭利な刃物で腹を切り裂いている瞬間が目に入った。

これ、いけるくね?

俺がそう思ったけど、霊夜はレンズ越しの警戒した目を変えず
霖堂霊夜
ううん、待って。コイツはまだ、第二の形態を残してる。そうじゃないと、結界がこの総合病院の広さと同じぐらいであることの辻褄が合わない!全員、悪霊の動向を警戒してて!
いつものふわふわとした感じの喋り方では無く、いつにも増してしっかりとした声音で俺らに指示を出した。

案の定、本体であろうなんかぶつぶつとした模様のヤツがクマの腹の中から出てきた。

ファンシーな見た目のヤツからグロテスクなの出て来たなー……とか思っていたら、本体は同じ高校の制服のヤツを見つけ、そいつ目掛けて大きな口を開けて飛んで行った。多分、食べるつもりなのだろう…え!?悪霊って人食べんのか!?

俺もだけど、多分同じ高校のヤツも「あ、これ終わった」とか思っていたであろう矢先、左目が赤くなった類が武器となる弓と矢を構えて駆けながら本体に向けて矢を放った。

放った矢の軌道は走っていた影響でブレていたはずだけど、ルキアと同じ「狙撃手の眼」の力によって物理法則とやらを無視した軌道を見せ、しっかりと本体の頭部を貫いた。
???
えっ…あっ…
六戸類
ボーっとしてないで、行くよ!
頭部を再生しているであろう本体に背を向けて、全速力で同じ高校のヤツの手を引きながら俺らのいる場所に走って類が戻って来た。

危機一髪、と言った所だろうか。
六戸類
救出成功〜
金森祐治
でかした、類!
六戸ルキア
兄さん、ナイスぅ!
???
…あ、ありがとう…ございます…。
霖堂霊夜
いやー、間一髪だったねー。
???
まさか…次の形態を残してるとは……。
息を切らせながらそう言う同じ高校のヤツは、ハッとした後、深々とお辞儀をしながら
江村のぞみ
自己紹介、遅れていましたね。江村のぞみです。六戸君は既に知ってると思いますが……
と、軽く自己紹介をした。

いや、のぞみの声透明すぎね!?

そんなことは今はどうでも良い。
金森祐治
よし、アイツが何者なのかわかった所だし、あとは俺らでぶっ倒すだけだな!
六戸類
だね。
六戸ルキア
ですね。援護は任せてくださいよ〜?
霖堂霊夜
よし、行くよ!
金森祐治
おう!
今は目の前の本体を俺らでぶっ倒すだけだ。

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