第8話

八曲目
62
2021/04/07 11:55
春川紗希
春川紗希
...___!
青風音羽
青風音羽
(あっ..まただ...)
春川さんはたまに言葉が途切れることがある。

その時、表情はいつもの笑顔ではなく口角が少し下がり目元が少し...無気力に見える。

この減少は自分にもたまに...というかよく起こる。

話すこと自体に慣れていない自分は気を抜くと声のトーンやテンションも少し下がってしまう。

なのでなんとなくわかってしまった。



いつもの頼りになり、友好的で気配り上手な春川さんは"演じられたもの"。



理由は知らないが無理しているようで、こんなことを言ってはいけないし、そもそも自分が元々似たような状況だったので言えるような立場じゃないけど...



いつも人の顔色を伺っているようで、
青風音羽
青風音羽
(....気持ち悪い)
そう思ってしまってる自分が居た。













また休日、一緒に遊びに行くことになった。
春川紗希
春川紗希
太鼓楽団しない?
青風音羽
青風音羽
おぉ、しよしよ!
前でやってた人が終わり交代してもらう。

百円ずつ入れてゲームがスタートする。

怜央とやったときに力が弱すぎて判定されなかった事があってから少し特訓したのは内緒だ。

太鼓楽団が終わり疲れた手をぶらぶらさせながらふと気になったことを聞いてみる。
青風音羽
青風音羽
他の音ゲーと違って慣れてるね、よくやるの?
春川紗希
春川紗希
うん!プリクラ撮りに来たときについでにね!
「やるのはJ-POPだけだけどね」


そういった春川さんの表情は少し曇っている。

プリクラ...ということは他の陽キャ友達と来た時にやったのだろう。

ボカロを知らない人でも太鼓楽団は有名だしそこらの陽キャでもやっているだろう。


J-POPだけ...



どうしてボカロが好きなことをそんなに隠したいのだろうか...






















帰り道、ずっと気になっていたことをとうとう口に出した。
青風音羽
青風音羽
ねぇ...初めてこのゲームセンターで出くわした時、私の腕、見た?
春川紗希
春川紗希
あぁ...あの...リスカ?大丈夫だよ!誰にも言ってないしこれからも言わない!それに...何かあるなら頼りないかもしれないけど相談してね?無理にとは言わないけど...
肯定し、無責任な言葉を並べる。
青風音羽
青風音羽
じゃあさ?いつも学校とかで一緒にいる友達は?一緒にいて楽しい?
春川紗希
春川紗希
えっ...何言ってるの?楽しいから一緒にいるに決まってるじゃん!
どんどんヒートアップしていく。
青風音羽
青風音羽
たまに表情曇ってる。誰かと関わること少ないから周りの会話は嫌でも聞こえてくるから私にはわかる
春川紗希
春川紗希
そっ...それは学級委員の仕事もあるから疲れてるだけで...!
青風音羽
青風音羽
疲れてるのにわざわざ絡む必要ある?
春川紗希
春川紗希
そっ...それは....
止めないと...





でももう...





止まらない。









ブレーキがかからないままついに一番触れてはいけないように触れてしまった。








青風音羽
青風音羽
どうして好きなこと隠すの?ボカロ好きなこと隠すの?何か都合の悪いことでもあるの?
春川紗希
春川紗希
...音羽..ちゃん?
青風音羽
青風音羽
その話し方も...その性格も...全部全部嘘くさくて...ッッ!!






駄目、言ったら駄目。



抑えろ自分...







青風音羽
青風音羽
気持ち悪い...好きに..自由に生きればいいのに...













あぁ...言ってしまった。





青風音羽
青風音羽
あっ..えっ..あっ.....ごっ...ごめんッ!




言った瞬間今までの勢いが嘘のように消え、ひたすら負の感情が湧き上がってくる。


そのままその場を走って逃げ出してしまった。




普段から人と目を合わせて会話のできないため下を向いていたから春川さんの表情は見えなかった。


いや...そんなの言い訳か...





怖くて見ることができなかっただけだ。





春川さんは追いかけてこなかった。










鈴木怜央
鈴木怜央
...音羽?
青風音羽
青風音羽
怜央...











つづく

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