夜。
キャンプに一時的な静けさが戻った。
焚き火は既に小さくなっていて、
ほとんどの隊員は交代で仮眠を取っていた。
あなたも、少し離れた簡易テントの中で眠っている。
ピアーズは一人、監視の交代を終えて、
その場に腰を下ろしていた。
夜風が少し冷たい。
それでも目は冴えたままで、
彼女のいる方向をちらりと見てしまう。
そこに、静かに近づいてくる足音。
クリスの声だった。
ピアーズは顔だけ向けて、
すぐに正面に戻した。
特に否定も肯定もせず。
クリスは少し笑って、隣に腰を下ろす。
焚き火の残り火が、
パチッと小さな音を立てた。
ピアーズは少しだけ口元を引き結んだ。
彼は一息ついて、低く続けた。
ピアーズは、視線を落とす。
彼の声が一瞬詰まる。
クリスはそれを黙って聞いていた。
だからこそ――と、
ピアーズは心の奥で思う。
このまま、何も知らずに
彼女を安全圏へ送り出して、
それっきりでいいのかと、
自分に問いかけてしまう。
その言葉に、クリスは深く頷いた。
ピアーズは目を伏せて笑った。
クリスはそれだけ言って、立ち上がる。
ピアーズは、遠くの空を見上げた。
ほんの僅かに、夜が明けはじめている。
その視線の先には、まだ眠る彼女の小さな影。
言葉では届かなくても、
少しずつ知りたいと思う気持ちは
確かにそこにあった。
救いたい。ただ助けたい――
だけじゃない。
もっと、彼女のことを知りたい。
それがどんな形でも。
そんな想いが、静かに夜の中で燃えていた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!