第81話

ピアーズ・ニヴァンス『守りたい理由』⑤
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2025/07/06 17:24 更新






夜。
キャンプに一時的な静けさが戻った。

焚き火は既に小さくなっていて、
ほとんどの隊員は交代で仮眠を取っていた。

あなたも、少し離れた簡易テントの中で眠っている。

ピアーズは一人、監視の交代を終えて、
その場に腰を下ろしていた。

夜風が少し冷たい。

それでも目は冴えたままで、
彼女のいる方向をちらりと見てしまう。

そこに、静かに近づいてくる足音。




クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
……彼女のこと、
気になってるのか?




クリスの声だった。

ピアーズは顔だけ向けて、
すぐに正面に戻した。
特に否定も肯定もせず。

クリスは少し笑って、隣に腰を下ろす。



クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
よくあることだ。
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
任務中に助けた人間に、
情が移るってのは。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
……そんなつもりはありません
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
まぁ、そう言うよな。
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
俺も昔、似たようなことがあった




焚き火の残り火が、
パチッと小さな音を立てた。



クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
気が張ってる時ほど、
人の本質が見えるもんだ。
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
お前が彼女に目を向ける理由も、
分かる気がするよ。




ピアーズは少しだけ口元を引き結んだ。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
…彼女、泣きもしないし、
文句も言わない。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
こっちの会話も完全に
分かってるわけじゃないのに、
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
無理して俺たちに気を遣ってる
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
そうだな。強い子だ
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
……俺たちといるのが、
どれだけ怖いかなんて、
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
たぶん俺にも本当の意味では
分からない......




彼は一息ついて、低く続けた。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
だから、早く救って
やりたいって思うんです。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
ちゃんとした場所に連れてって、
安心させてあげたい。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
……でも




ピアーズは、視線を落とす。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
その時、彼女は帰るんですよ。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
日本に。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
……助けたら、
それで終わりです。
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
......
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
別に、何かを期待してる
わけじゃないです。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
ただ、……




彼の声が一瞬詰まる。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
……俺、彼女のこと、
何も知らないんです。




クリスはそれを黙って聞いていた。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
名前は、タグで見ました。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
でも、会話はほとんどできないし、
好きなものも嫌いなものも……
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
何も知らない。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
彼女の笑顔も、無理して作ってるのか、
本物かも分からない。




だからこそ――と、
ピアーズは心の奥で思う。

このまま、何も知らずに
彼女を安全圏へ送り出して、
それっきりでいいのかと、
自分に問いかけてしまう。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
任務だから。
分かってるつもりです。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
気持ちを持ち込むなって
いうのも。
ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
でも、気づけば目で
追ってしまうんです。




その言葉に、クリスは深く頷いた。



クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
お前は、そういうやつだ。
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
真面目で、優しくて……
正直で、臆病だ。




ピアーズは目を伏せて笑った。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
臆病……確かに、
そうかもしれませんね。
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
でも、だからこそ、
誰かを守る時に嘘がない。
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
……俺は、それを信じてる。




クリスはそれだけ言って、立ち上がる。



クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
彼女のことを何も知らないなら......
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
これから知っていけば良い
クリス・レッドフィールド
クリス・レッドフィールド
時間は、少しはあるだろ?




ピアーズは、遠くの空を見上げた。 

ほんの僅かに、夜が明けはじめている。



ピアーズ・二ヴァンス
ピアーズ・二ヴァンス
……はい




その視線の先には、まだ眠る彼女の小さな影。

言葉では届かなくても、
少しずつ知りたいと思う気持ちは
確かにそこにあった。

救いたい。ただ助けたい――
だけじゃない。
もっと、彼女のことを知りたい。

それがどんな形でも。

そんな想いが、静かに夜の中で燃えていた。

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