目覚めた部屋に戻ると
膝丸という男が外に出ていった
過去を知りたいなんていう人っているんだな
私が生まれて死んだことなんて知る必要なんてないのに…
私は…いや私たちは
物心ついた時から暴言と暴力を振られて育った
皆、次の日には冷たくなっていた
女であるということは本当に嫌だった
泣きたかった
逃げ出したかった
でも…逃げるなんてことできなかった
それから数年耐えた
そして10歳を迎えた時、漸く解放された
…そう
解放された…そう思ったのに
あの日私達を解放したのは『鬼』だった
それもただの鬼じゃなかった
人喰い鬼だったのだ
そいつは母を殺し次に父を殺した
その次は妹、兄、弟
どんどん殺していった
私はその時死んだ父の下で息を殺してそいつがいなくなるのを待った
あいつが居なくなったのは朝日が昇る数刻前だった
いなくなったと同時にわたしは父の下からはい出て
家から飛び出した
その時に師範である人に拾われた
その後から起きたこと、経験したこと、悲しかったこと
多くのことを薬研藤四郎に話した
途中涙で顔を見ることが出来ず何度か話を打ち切ってしまったが彼は急かすことなく話を聞いてくれた
最終決戦で犯した…忘れるなんてできない過ちを
どんな最後を迎えたのかを話し終えた時には
もう前なんてみれなかった
この言葉を機に薬研藤四郎に抱きつき声を殺して泣いた
師範以外で初めて泣きついた
泣き疲れたのか
いつの間にか私は薬研藤四郎の腕の中で眠ってしまった














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。