〈ともやんside〉
ドタドタと物音が聴こえて、目が覚める。
ここに居るはずのない、ぺろと
顔を真っ赤にしたあなたちゃんが騒いでいた。
あなたちゃんが、ぺろの酒を持っているようだった。
それも、度数の高い酒だった。
あなたちゃんはピョンピョンと跳んで、
俺が取り上げた酒を取ろうとする。
ぺろは俺から酒を受け取り、グビっと飲んだ。
あなたちゃんを座らせて、俺はその横に座る。
膨れっ面になっているあなたちゃんを見るのは
今日だけで2回目。
そっぽを向いたまま、俺の手から水を奪って飲む。
少し湿った髪を触りながら問いかけても、
あなたちゃんの返事はなかった。
俺とぺろで残った酒を飲んでから、
しばらくして ぺろが眠った。
誰も車を運転できないから、今日は三人で
このまま泊まっていくことになった。
俺は散らかった缶を端に避けて、
テーブルの上で編集をする。
突然、さっきまで拗ねていた
あなたちゃんに横から抱きつかれる。
俺の腹に顔を埋めて、グリグリと押してきた。
拗ねたり、甘えたり。
酔ったあなたちゃんは気分屋で、
猫のようだった。
腹に暖かい息がかかる。
腕を強く締め付けられて少し苦しい。
返事をしても、あなたちゃんは動かない。
ふにゃっと笑って、ゆっくりベッドに歩いていく。
静かになった部屋で、
俺の鼓動だけが騒いでいた______。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!