天沢くんの家はこの辺りだって前に言われたけど、正確な位置はわからない。
勢いで来てしまったものの、家の場所がわからず、途方に暮れていた。
「あら、あなたは」
目の前には保健室の先生が立っていた。
今日はお休みしているのか、とてもおしゃれな格好をしている。元々整った顔をしていたため、とても似合っている。
「どうかした?困ってるみたいだけど」
もう白状してしまおうと私は口を開いた。
「その人はここの近くに住んでるの?」
「近所の人ならわかるかもしれないわ。誰か教えてくれる?」
天沢くんの名前を言うだけで胸がドキドキする。
「あら、知ってるわよ」
先生の言葉にすごい勢いで顔を上げた。
「知ってるもなにも弟だからね」
保健室の先生って天沢くんのお姉さんだったの!?
少しパニックになりながら、天沢くんのお姉さん、琴音さんに着いていく。
天沢くんと付き合えたら、私の本望だけど。
クスクス笑う琴音さん。
天沢くんは私のこと、なんとも思ってないから。
必死な表情…、?
天沢くん、なんでそんなこと、してくれるの…??
頭下げて、なんて…。
私のために頭下げてくれた、なんて…。
顔を見たくない、なんて思ったことないのに…。
ガチャっとドアノブに手をかけ、ドアが開いた。
天沢くんに、伝えるんだ。
“大好きです”って。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!