第42話

人探し
23,654
2019/09/09 15:16
我妻 善逸
…俺はまた来るからね、あなたちゃん。
あなた

え?

我妻 善逸
俺は何度だってあの甘味処に行くから!あなたちゃんの為なら!
あなた

えっと…

竈門 炭治郎
俺も行くぞ。だから、心配しなくていい。無理にはあなたさんを本部に連れて行ったりはしない。
嘴平 伊之助
伊之助さんが黙って猪の被り物をするのを横目に入れながら、私は困惑する。
あなた

あ、え、えぇ…ど、どうしましょう…

思わず言葉となって出て来てしまうぐらいだ。

そもそも私を連行しようとする鬼殺隊士は、私がどれだけ叫んでも、話をしても、こんな風には聞いてくれなかった。

だから私は彼らに抗い、本部へと送り返した。
竈門 炭治郎
あなたさん、
あなた

は、はい?

竈門 炭治郎
俺達に聞きたい事があるなら何でも聞いていいって、言ったけど、あなたさんは俺の背負い箱の中身については聞いて来なかった。
あなた

…それは、その…聞けなかったんです。鬼を連れている剣士なんて初めてで、どういう事なんだろう、ってずっと思ってました。でも、炭治郎さんだから…

私は炭治郎さんの動くことない瞳を見つめる。
あなた

その…何かあるんだろうなって。

竈門 炭治郎
やっぱり思った通りだ。
あなた

へ?

竈門 炭治郎
あなたさんは優しい。
あなた

っ…

そんな事はない。
私は実際、炭治郎さんの背負い箱の中身を力づくでこじ開けようとした。


(私なんかよりも、本当に優しいのは炭治郎さんですよ…)


私は炭治郎さんが必死に守る背負い箱を襲いかけたのに、
炭治郎さんは私の要件を呑もうとしてくれている、私を理解してくれようとしている。
あなた

このまま、黙っているのは違う気がする。

炭治郎さんや、善逸さん、伊之助さんに対して、私がこのまま何も言わないのは、誠意も何も無い気がする。
あなた

…を探してるんです。

竈門 炭治郎
私は布団から出ると、部屋の隅に立ててあった、刃が透明と化する日輪刀を手に取る。
あなた

この刀の真の持ち主を探しているんです。

我妻 善逸
え、どういう事?
あなた

この刀は私が幼い時に、ある小屋の戸の外に置いてあった物なんです。だから、正式には私の物ではありません。

私は上半身を起こした炭治郎さん、善逸さん、両手を頭の後ろにして寝転んだままの伊之助さんに話続ける。
竈門 炭治郎
もしかして、その持ち主を探す為にこの土地に…?
あなた

そうです。ここは鬼が活動しやすい地域、しかも私が来た時には既に鬼が沢山いました。そこでその持ち主について、情報を鬼に求めているのです。

嘴平 伊之助
お前、馬鹿なのか?普通、鬼に聞いたって覚えてねーだろ。
あなた

いいえ、日輪刀を手にする多くは鬼殺隊士だと聞きました。それに、手がかりはまだあります。

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