伊之助さんが黙って猪の被り物をするのを横目に入れながら、私は困惑する。
思わず言葉となって出て来てしまうぐらいだ。
そもそも私を連行しようとする鬼殺隊士は、私がどれだけ叫んでも、話をしても、こんな風には聞いてくれなかった。
だから私は彼らに抗い、本部へと送り返した。
私は炭治郎さんの動くことない瞳を見つめる。
そんな事はない。
私は実際、炭治郎さんの背負い箱の中身を力づくでこじ開けようとした。
(私なんかよりも、本当に優しいのは炭治郎さんですよ…)
私は炭治郎さんが必死に守る背負い箱を襲いかけたのに、
炭治郎さんは私の要件を呑もうとしてくれている、私を理解してくれようとしている。
このまま、黙っているのは違う気がする。
炭治郎さんや、善逸さん、伊之助さんに対して、私がこのまま何も言わないのは、誠意も何も無い気がする。
私は布団から出ると、部屋の隅に立ててあった、刃が透明と化する日輪刀を手に取る。
私は上半身を起こした炭治郎さん、善逸さん、両手を頭の後ろにして寝転んだままの伊之助さんに話続ける。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。