第180話

行き着く、その先へ
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2021/02/05 17:00

最後の最後まで逃げ切る事を、

諦めてはいけない。


私が私の目的を果たす為に。



誰にも私が生きてきた道のりも、世界も、思い出も、出会った人達をも否定されることがないように。


決して、炭治郎達との暖かい時間を、

周囲から告げられた孤独という名だけで包んでしまわないように。


私自身が私自身をこれ以上否定することが無いように。


例え、戻ったところで、どんな処罰が私を待ち受けていようとも。



私がこれから前に進む為には必要不可欠な場所だ。





帰ろう、蝶屋敷に ───────







彼らの両腕から滑り落ちた私は震える両腕で身体を支え、何とか立ち上がろうとした。
あなた

っっ……


視界が大きく揺れ、自分がきちんと立てているのかさえも怪しい。
部下
な、何してるんだ!あまり傷を付けるなとの思し召しだろう?!
部下
きゅ、急に暴れだしたからだろう?
部下
骨が折れていたらどうするんだ!
部下
わ、分かっているさ。皆まで言うな!

『ガクンッ、』

視界が急降下し、力の入らない脚が私をその場に縛り付ける。


(立、てま、せ…ね。なら…)


言い争う部下二人を背にした私は全身を地面に伏せさせると、

片腕を前に伸ばし、その腕に向かって残りの身体を這い寄らせた。


『ジリジリ、ジリ…』


腕を伸ばしては身体を引き寄せ、二人から離れようと進み続ける。


『…ジリジリ、ジリ……』

あなた

っ、ぐぅ…、

部下
早いところ、車に乗せてしまうぞ!唯でさえ毒の効き目がおかしいんだ!
部下
ああ、分かってる!

『ガッ!』

伏せた身に影が重なった瞬間、匍匐前進をし続ける私に後ろから強い力で掴まれた。

血が滲んだ皮膚がキリキリと痛む。
あなた

っ、!


振り返る様に後ろへと引っ張られた力に従って、私は爪で部下の頬を引っ掻いた。

『ッシュ!』
部下
いっ!

私の爪は眼球をも掠めたのか、あまりの痛さに私の肩を掴んだ男の手が離れた。

目元を抑えながらよろけた部下の一人が怒りを露わにする。
部下
…お嬢様だからって下手に出ていれば、良い気になりやがって!
部下
お、おい!
部下
殴られ足りねぇってなら、その綺麗な顔立ち、鼻の根元から潰してやろうか?!
部下
そんな事をすれば主様に何と言わ
部下
関係ない!

『ガシッ!』
あなた

っく、はっ、


隊服の詰襟ごと背後から首根っこを掴まれる。

少し持ち上げたかと思えば、一気に地面に叩きつけられた。

『ドンッ、』

鈍い音が耳に届いた瞬間、強烈な痛みと共に今度は髪を鷲掴みにされる。
あなた

ぅっ…ぁ、

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