彼女は笑いと驚きが混じった声で聞き返してきた。
彼女は目を見開いて私を見つめた。
そして、きゅっと口を結んで私の手を両手で包んでくださった。
そういえば、大きめのリュックを背負っていたのを思い出した。確か玄関に置いてあるが、本当にこのまま行くつもりだったと思うと少し寒気がする。
あなたの下の名前さんは私に背を向けて玄関へ歩いて行った。
戻って来ると、あのリュックを背負っていた。私の前でそれを下ろすと、ジッパーを開けて中に入れた物を見せてくれた。
彼女はまた笑ってくれた。
理由は何であれ、少し無邪気な顔をしていて少し安堵する。
財布と、スマホと、食べ物と、それと……
そう問いかけると、あなたの下の名前さんは、え、と言ってあたふたし始めた。
サイズの合わない服の袖をぎゅっと掴んでこちらを見つめていた。
選択が終わるまでは、この部屋にまだ2人でいることが出来る。それを嬉しく思ってしまっていた。
人殺しの貴女とダメ人間の私。これから始まる旅も、何だか上手くいくような気がした。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!