るぅとside
僕の母方の祖母が亡くなった
とても優しい人だった
亡くなる前に何度か会いに来てくれた
それから祖父がよく会いに来てくれた
10年後
祖父が亡くなった
その日
僕は夢を見た
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走り回った
ただただ走った
真っ白な風景は変わらなかった
急に見えた人影
その後ろ姿には見覚えがあった
そう言うとその人は振り向いた
おばあちゃんだった
微笑みながら、僕を抱き締めてくれた
温もりを感じていたあのときハグとは違う
祖母は冷たかった
泣いた
10年ぶりの祖母
久し振りに会った祖母
嬉しかった
悲しかった
祖母はもういないって自覚したはずなのに
まだいるんじゃないかって錯覚してしまう
止まったはずの涙がまた溢れた
頭を撫でられた
後ろには祖父がいた
穏やかな表情で僕の頭を撫でていた
涙が止まらない
それから僕はしばらく泣いた
そして泣き止んだとき『ごめんね』
そう言いながら離れて
祖母と祖父が前を歩いた
いや、歩き出した
何も持ってない
ただお互いを頼りにしながら歩いていた
僕から離れていき
遠くへ遠くへ歩いて行こうとしていた
祖母は10年、祖父を待っていたのだろうか
そんなことを考えながら
悲しいような
嬉しいような
複雑な感情だったけれど
笑顔で僕の前を歩いたから
僕も嬉しくなった
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目が覚めた
きっと旅立ったんだな
長い長い旅に
遠いところへ
二人で歩いていくんだろうな
そう思うと涙が溢れてきた
そう呟いた
『いってきます』
そう聞こえた気がした
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。