第31話

30
1,562
2020/09/07 13:00



溢れてくる涙を止められず、
トイレに駆け込んで、1人涙を拭いた。



スタッフ「浜中さーん?撮影始まるので同行お願いしまーす」

『あ、はいっ。すぐ行きます、』



泣いたことがバレないように、
簡単に化粧を直して、スタジオに向かう。



_



スタジオでは、
さっきの雰囲気とは全く違った、笑顔の龍太くん。

疲れを見せない、さすがアイドルやなぁって、
改めて感じさせられる。



_



撮影が終わると、龍太くんは直ぐに舞台稽古に向かっていってしまった。



『…あ、携帯置いてってるやん、』



今はどの舞台で、どこの稽古場なのか…、
全くそんな話もしないから、場所も分からない。



『…なんも分からん、』



また涙が頬を伝った。



_



ピコン
♡♡
次の時△△って
レストランどうですか?😊



…通知音に思わず画面を見ると、
女の人からのメッセージが映される…。



見ちゃいけない。

ギュッと握りしめる手は震えていた。



ピコン
♡♡
楽しみにしてますね♡



龍太くんが、忘れたことに気づいたかもしれないと、開いてみるけれど、さっきのメッセージの続きだったようで、心が抉られる気分だった。



_



とりあえず、文ちゃんに龍太くんの忘れ物の事を相談して、文ちゃんから龍太くんのマネージャーさんに連絡を取ってもらった。

そのまま携帯は、龍太くんのお家に届けることに。



合鍵で龍太くんの部屋に入り、
そっと、机に画面を伏せて置いて、メモを書き残す。



✎︎____________



毎日お疲れ様。

取材現場に置き忘れてたよ。

さっきは、

台本読んでる時にお邪魔してごめんなさい。

次の舞台も頑張ってね。



✎︎____________





『…はぁ』



小さく溜息をついて、部屋をあとにした。



_



自分の家に帰り、
なにも考えないように音楽を流す。



♪優しい人たちの 然り気無い誘いを
バツと大きく腕で書いた 少し笑った

心に穴が空くってこと 分かった気がした
妙にピッタリで また 少し笑った



流れてきたのはDREAMS COME TRUEの【すき】

…なんてタイムリーなんだろう。



歌詞に浸りながら、歌詞と同じように、
膝を抱えて、涙を流した。



プリ小説オーディオドラマ