第59話

fifty-eighth
825
2024/11/03 14:10 更新
森鴎外
森鴎外
ひと刺し___。






森鴎外
森鴎外
ひと刺しで敵の急所を突く必要がある。
投げられた何本目かのメスは、
真っ直ぐと飛ぶも、
掛けられた的を大きく外れ、
またもや横の壁に突き刺さる
エリス
エリス
へたくそ
森鴎外
森鴎外
よし
横に反対向きで置かれた椅子で
絵を描き続ける少女の言葉なんて
聞こえなかったかのように、
彼は腰掛けていた椅子から立ち上がった










そしてくるりと回って少し歩くと、
少女の傍らに置かれたテーブルの上にのった
クレヨンを箱から1本取り出した
エリス
エリス
ちょっと!
何するの?
森鴎外
森鴎外
お友達に手紙を書く


































































ナサニエルside
マーガレット・M
マーガレット・M
本国からの積み荷は
第三船倉に運んで!
ぶつけたら弁償よ!
マーガレット・M
マーガレット・M
全く……
何でアタシが荷積みの
指揮なんて……
ナサニエル・H
うるさい
マーガレット・M
マーガレット・M
は?
ナサニエル・H
視線が邪魔で神の声が聞こえない
マーガレット・M
マーガレット・M
あらそう
牧師様は敬虔でいらっしゃること
マーガレット・M
マーガレット・M
じゃあこの一節も大好きよね?
『塵は塵へ還る』
彼女が指を鳴らすと、
私の読んでいた聖書のページは宙を舞い、
紙はゆっくりと風化していく






仕方なく手元の聖書だったものを閉じる
ナサニエル・H
……『創世記』3章19節
マーガレット・M
マーガレット・M
皆が陸に散っている間、
この船を守ることが
アタシ達の任務よ
忘れたの?
ナサニエル・H
お嬢様こそお忘れですか?
ナサニエル・H
罪深き者に裁きを下すのが私の神命
敵など幾らでも来ればいい
ナサニエル・H
己が業罪を命で贖わせてやりましょう
組合  職人━━━━━━━━━━━━




━━━━━━━━━━ナサニエル・H







能力名━━━━━━━━━━━━━━━





━━━━━━━━━━━━━━「緋文字」
ナサニエル・H
それとも
貴方も贖罪をお望みですか?
マーガレット・M
マーガレット・M
貴方なんてアタシの靴を
磨く資格もないわ
組合  徒弟━━━━━━━━━━━━━━





━━━━━━━━━━━マーガレット・M







能力名━━━━━━━━━━━━━━━





━━━━━━━━━━「風と共に去りぬ」
モブ
あの…
二人
ッ!
モブ
ひぃっ!
モブ
荷物の中に、このような手紙が…
ナサニエル・H
手紙?
私はその手紙を彼から受け取り、
自分の見やすい位置に持ち開く









そこには赤い文字でこう綴られていた
ナサニエル・H
[拝啓]
森鴎外
森鴎外
[自下益々ご清祥の事
お慶び申し上げます]
[そきだく廣大な北米の大地より来られし
皆人様に於かれましては目捷の如き本邦は
嘸や困する所にあられるかと存じます]
森鴎外
森鴎外
[我が手児奈も『外で遊びたい』と
蜂吹く様子は嘆ずるほどに
愛しきやく御座います]
マーガレット・M
マーガレット・M
これ…何て?
ナサニエル・H
『幼女かわいい』と…
森鴎外
森鴎外
[さて手前が筆を執りましたるは
此度の兵革の折
僭越ながら組合御所有の
次なるを消する旨申し伝えたく__]
森鴎外
森鴎外
[一. 豪華客船ゼルダ号
一. ナサニエル様が御身命
一. マーガレット様が御身命
一. 我等が愛娘あなた
以上
ポートマフィア首領
森鴎外]
そう記されている手紙は、
あなたの記述にだけ黒で線が引かれていた
ナサニエル・H
…!
マーガレット・M
マーガレット・M
船と私達の命を消すって?まさか
彼女の言葉を無視して、
私は他の者へ指示をした
ナサニエル・H
荷を積み込み次第出航します
時間は?
モブ
あと二時間程かと
ナサニエル・H
三十分で済ませなさい
モブ
三十分!?
ナサニエル・H
通常搬入と並行して輸送ヘリで
直接デッキのヘリポートに
荷物を降ろせばいい
ナサニエル・H
それと船周辺の警戒強化を
マーガレット・M
マーガレット・M
ちょっと本気?
ただの嫌がらせよこんな脅迫状
ナサニエル・H
いいですか?
陸地に拠点を持てない
我々組合にとって
この船は前線基地に等しい
マーガレット・M
マーガレット・M
それが何?
ナサニエル・H
補給中の今が最も無防備なのですよ
ナサニエル・H
敵とて異能力集団
私達の命は無理でも
奇襲を掛ければ船くらい
沈めることが出来るかもしれません
マーガレット・M
マーガレット・M
にしても、ここだけ線が
引かれているのは
何故かしら?
ナサニエル・H
何処からか、彼女が現在船に
いないことを知ったのでしょう。
まあ奪われないのであれば、
寧ろ此方にとっては好都合ですが。
マーガレット・M
マーガレット・M
愛娘、何て書いてはいるけれど
本当の所愛情は大したこと
なかったりして。
ナサニエル・H
…若しかしたら、
有り得るかもしれませんね。
彼女は『幼女』と評するには
少々育ち過ぎている
モブ
ナサニエル様!
不審な男を発見しました





















モブ
桟橋にて発見
逃亡したため拘束しました
モブ
所持品にこれが
そう差し出されたのは、
紙袋に大量に入った檸檬…








いや檸檬を模した爆弾だった
マーガレット・M
マーガレット・M
所詮は島国の悪玉ね
ナサニエル・H
貴方の顔は報告書で見ましたよ
ポートマフィアの爆弾魔ボマー殿
梶井基次郎
梶井基次郎
あぁ〜私はだれ〜?
ここはどこ〜?
ナサニエル・H
かつて列車の爆破を企て
探偵社に阻まれたと
梶井基次郎
梶井基次郎
あれは実験!
失敗もまた貴重な標本サンプルなのだ!
マーガレット・M
マーガレット・M
アタシが木乃伊にしましょうか?
ナサニエル・H
いえ敵の手管はおおむね読めました
ナサニエル・H
彼は爆弾を仕掛ける役だったのでしょう
お粗末な組織だ
私は首から下げたロザリオの先で、
自身の手に傷をつける








傷から流れた血液は
地面へ滴ることなく文字となり
宙へと浮かんでいく
梶井基次郎
梶井基次郎
血が……!?
ナサニエル・H
『緋文字』は神の言葉
不義なるを罰し
消えぬ刻印を残す断罪の異能
梶井基次郎
梶井基次郎
ちょ、ちょっと!
判った!降参降参全部話そう!
梶井基次郎
梶井基次郎
実は僕は宇宙大元帥からの外交大使で…
マーガレット・M
マーガレット・M
勘弁してよもう…
私は、異能を彼に向かって打ち出す








避けられるはずもなく
直撃を食らった彼は呻き声をあげた
ナサニエル・H
どうやら貴方は悔悟の
贖罪を拒まれるようだ
ナサニエル・H
この檸檬型爆弾が貴方の異能力だ
実にくだらない
ナサニエル・H
爆弾など一般人でも作れる
貴方程度の異能力で船を落とそうとは
組合も舐められたものです
手に取った爆弾のピンを抜き、
彼の側へと投げる














直後、背後で爆発音が鳴る
ナサニエル・H
神の恩寵を
モブ
『これより補給物資を船に搬入する』
梶井基次郎
梶井基次郎
神……神ねぇ
梶井基次郎
梶井基次郎
神の声を君が聞けるのかい?
二人
ッ!
梶井基次郎
梶井基次郎
科学こそ神の創造せし
この宇宙を理解する唯一の言語だよ?
マーガレット・M
マーガレット・M
爆発が効いてない…!?
梶井基次郎
梶井基次郎
ここで残念な御知らせ
君達宗教者は信じるのが仕事だろうが
科学の根源は何時だって疑うことだ
梶井基次郎
梶井基次郎
爆弾を作る異能力という話
疑うべきだったねぇ
確かに爆弾は僕が自ら
手内職で造ったものだ!
梶井基次郎
梶井基次郎
そして僕の真の異能は
『檸檬型爆弾で毀傷ダメージを受けない』能力!
檸檬!美しき紡錘形は
幾何学の究極にして
退屈な世界の破壊者!
梶井基次郎
梶井基次郎
そんな訳で僕と宇宙大元帥から
君達に贈呈品プレゼントだ!
瞬間、ヘリから釣り上げられていた
コンテナが爆発する





















そこから甲板に降り注ぐは、
夥しい量の檸檬型爆弾だった
ナサニエル・H
全員船から離れろ!
組員も我々も、船から急いで降りる








全員逃げ仰せたところで、
船の上部は爆破により火の海だった
マーガレット・M
マーガレット・M
船が…!
何なのよあいつ!?
ナサニエル・H
……予告状は悪戯ではないようです
そして標的はまだ二つ残っている
ナサニエル・H
間もなく敵が押し寄せるでしょう
此処で迎え撃ちます
奇襲さえ封じれば、異能力者が
何人来ようと私の敵では無い







森鴎外
森鴎外
…と、敵は考えるだろうね
森鴎外
森鴎外
確かに組合の異能力者は脅威だ
うちの精鋭でも撃破は難しいだろうね
森鴎外
森鴎外
と云う訳で__
今うちで一番遣る気に
溢れた子を配置した














気が付くと周りの者の胸を、
黒い何かが貫いていた













新たなる声が聞こえた瞬間、
私の胸も同じものが貫く
芥川龍之介
芥川龍之介
潮風が__胸に毒だ
手早く済ませよう

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