第29話

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2024/06/03 12:11

照side











とうとう言ってしまった。


でも、なんだか今しかない!!今だ!!と言われているようで。

驚いてか目を見開く辰哉さんに向かって、彼に教えてもらった手話で、想いを紡いだ。






照「返事、聞いてもいいですか?」







じんわり頬があたたかくなる感覚と、目の前の辰哉さんの目に滲んでいく涙。


ドクドクと脈打つ心臓を落ち着かせつつも、彼の口から漏れる空気の音に耳を澄ませた。












大介「言葉で伝えられることに、俺たちは感謝しないとだよね」


佐久間の一言で、俺はもっともっと勉強しなくちゃと思った。




翔太「ふっかへの思いが本当なら、心からあいつを愛してやって」


辰哉さんに対するこの思いに気づけたのは、翔太さんの言葉のおかげ。




康二「そんな悲しい顔せんとってよぉ笑笑」


明るい康二さんの存在が、俺に勇気をくれた。







照「辰哉さ、…」













辰哉「おれも、好き」









初めて聞いた、彼の声。








照「ぇ、」





辰哉「俺も、照くんのこと好きだよ」






涙を流しながらもそう続けてくれる彼は、今までの何倍も綺麗に見えた。







初めて聞いた大好きな人の声は新鮮で。


鈴みたいに軽やかで、ヴェールのように透き通ってて、心に染み込んでくる声だった。









辰哉「照くん」



辰哉「俺と、付き合ってください」






涙に溢れてくしゃくしゃになった顔で不器用に笑って見せて、そう続けてくれた。




みんなの言葉が走馬灯みたく頭に蘇ってきて、俺を鼓舞する。

これこそ、俺の返事は一択。








照「よろしくお願いします」





手話と一緒に声を出して。



辰哉さんの手が口元に寄せられて、ふにゃりと頬を緩ませた。








辰哉「聞こえないけど、感じられたよ」






嬉しそうなその笑顔が最高に大好きでたまらない。









ぎゅ。


と彼の体を抱き寄せてみれば、とくとく、と静かな鼓動を感じた。










声で互いに繋がれなくとも、俺と彼を繋ぐものがいっぱいある。





俺たちは俺たちらしい、そのままの毎日を過ごしていけたらな。

なんて、柄にもないことを思って、離すまいと華奢な彼の体をひしと抱きしめなおした。














end.







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