第5話

727
2026/04/24 19:41 更新
あなた
今日は件の町周辺にいる低級の祓除と住居確認、
荷物の整理と、あとは__



ぶつぶつと独り言ちながらスケジュールの確認を行うあなた。
自室の姿見に映る彼女は何時もの黒で統一された(外に出れば職質されそうな)呪術高専の制服では無く、生成色をベースとした、かもめ学園高等部の制服を身につけていた。
なにせ、今日より潜入任務が始まるのだ。仰々しく潜入と称してはいるが、実際のところ単なる『生徒』として過ごしながら祓除するだけで、緊迫した状況になどそう出会すことはないだろう。というのが上層部の見解らしい。頭がお花畑な爺共は熟慮を知らないようで、あなたはそれが残念でならなかった。

現在時刻は午前五時前後。あなたを除けば女子寮に滞在している唯一の女子たる禪院真希も、夜更かしをしていなければ就寝中の時間帯である。
あなた
あの人五条も、一体如何してこんなギリギリに送ってくるんだか……
あなた
(お陰で動作確認の為に時間を作らなければならなくなったし。昔から時間にルーズ過ぎるんだよあの人…)

普段呪霊と戦闘する時の要領で身体を動かせば、腹筋を覆うほどの大きなリボンとスカートが踊るように広がる。後ろに下がる類いの動作を取るとリボンがかなり邪魔になるのが難点だが、目を瞑ってもそこまで大きな支障にはならないだろう。

歩く度ひらひらと揺れるスカートは中学時代を想起させる。卒業してまだ三月しか経っていないのに、伏黒家から通学していたあの頃がもう随分と昔の事のように感じられた。


あなた
……津美紀さん…
あなた
……………………




伏黒恵の姉である伏黒津美紀は、一年程前から原因不明の昏睡状態に陥っている。
原因不明の死や行方不明は呪術界では良くある話なので、五条さんは余り重く捉えていないだろう。もっとも、主観的な意見なので本人がどう思っているかは分からないが。
恵くんや他の呪術師は、津美紀さんがああ・・なった原因は呪霊にあると思っているようだ。


しかし、何方かと言えばあれは……


あなた
……!いけない、ゆっくりしている暇は無いんだった









スケジュールの確認の後、任務先の住処拠点に持っていく予定の荷物を纏める。と言ってもリュックサックに詰められる程度の物しか無いので、そこまで時間は掛からなかった。
町迄はかなりの距離があるし、間食用に何か持っていくべきだろうか?と思ったが、部屋に食べ物と言える物を一切置いていなかったので諦めた。流石に今からコンビニに行ってしまえば予定時間に間に合わない。今回の任務の担当補助監督の方が迎えに来るまであと1時間程度しかないのだ。

丁度小腹が空いてきた為、制服を着替えてから共有スペースへ向かう。
時々ミシミシと床が軋むので、真希さんが起きてしまわないか、何時か底が抜けてしまうのでは、等と若干冷や冷やしながら暫く歩いていれば、ふと慣れ親しんだ呪力を感じた。

どうやら先客がいたらしいが……こんな時間に起きているとは珍しい。


あなた
おはよう恵くん
伏黒恵
伏黒恵
おはよ



報告書をまとめている最中らしい恵くんに挨拶をしてからロッカーの上に置いていた自前のクーラーボックスから完全栄養食を取り出す。特に用事も無かった為適当な椅子に座り黙々と食していれば、ふと横から視線を感じた。
物申したそうに眉を顰め、此方を見詰める彼に『どうしたの』と話を促す。


伏黒恵
伏黒恵
またソレで済ませてんのか
あなた
まあ…作って食べる時間が惜しいからね
伏黒恵
伏黒恵
真希さんたちにバレたらドヤされるぞ…
あなた
それは勘弁だけど、何だかんだ恵くんは黙っててくれるでしょ
伏黒恵
伏黒恵
…………
伏黒恵
伏黒恵
……バレても擁護しねぇからな
あなた
ふふ、流石にそんな図々しく無いよ

プリ小説オーディオドラマ