ぶつぶつと独り言ちながらスケジュールの確認を行うあなた。
自室の姿見に映る彼女は何時もの黒で統一された(外に出れば職質されそうな)呪術高専の制服では無く、生成色をベースとした、かもめ学園高等部の制服を身につけていた。
なにせ、今日より潜入任務が始まるのだ。仰々しく潜入と称してはいるが、実際のところ単なる『生徒』として過ごしながら祓除するだけで、緊迫した状況になどそう出会すことはないだろう。というのが上層部の見解らしい。頭がお花畑な爺共は熟慮を知らないようで、あなたはそれが残念でならなかった。
現在時刻は午前五時前後。あなたを除けば女子寮に滞在している唯一の女子たる禪院真希も、夜更かしをしていなければ就寝中の時間帯である。
普段呪霊と戦闘する時の要領で身体を動かせば、腹筋を覆うほどの大きなリボンとスカートが踊るように広がる。後ろに下がる類いの動作を取るとリボンがかなり邪魔になるのが難点だが、目を瞑ってもそこまで大きな支障にはならないだろう。
歩く度ひらひらと揺れるスカートは中学時代を想起させる。卒業してまだ三月しか経っていないのに、伏黒家から通学していたあの頃がもう随分と昔の事のように感じられた。
伏黒恵の姉である伏黒津美紀は、一年程前から原因不明の昏睡状態に陥っている。
原因不明の死や行方不明は呪術界では良くある話なので、五条さんは余り重く捉えていないだろう。もっとも、主観的な意見なので本人がどう思っているかは分からないが。
恵くんや他の呪術師は、津美紀さんがああなった原因は呪霊にあると思っているようだ。
しかし、何方かと言えばあれは……
スケジュールの確認の後、任務先の住処に持っていく予定の荷物を纏める。と言ってもリュックサックに詰められる程度の物しか無いので、そこまで時間は掛からなかった。
町迄はかなりの距離があるし、間食用に何か持っていくべきだろうか?と思ったが、部屋に食べ物と言える物を一切置いていなかったので諦めた。流石に今からコンビニに行ってしまえば予定時間に間に合わない。今回の任務の担当補助監督の方が迎えに来るまであと1時間程度しかないのだ。
丁度小腹が空いてきた為、制服を着替えてから共有スペースへ向かう。
時々ミシミシと床が軋むので、真希さんが起きてしまわないか、何時か底が抜けてしまうのでは、等と若干冷や冷やしながら暫く歩いていれば、ふと慣れ親しんだ呪力を感じた。
どうやら先客がいたらしいが……こんな時間に起きているとは珍しい。
報告書をまとめている最中らしい恵くんに挨拶をしてからロッカーの上に置いていた自前のクーラーボックスから完全栄養食を取り出す。特に用事も無かった為適当な椅子に座り黙々と食していれば、ふと横から視線を感じた。
物申したそうに眉を顰め、此方を見詰める彼に『どうしたの』と話を促す。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!