気がついたら私は知らないところにいた。
桜の木があるのどかな丘だった。
自分の体を動かそうとするが、なぜかできない。
それでも勝手に体が動く。
これは…誰かの記憶のようだ
桜の木の根元まで行くと白い布が落ちていた。
なんとなくそれに近づくと、それはただの布ではなく、赤子のおくるみだと理解した。
体に対して大きなおくるみは乱暴に巻かれていた。
その中でうぅーとかやあぁーとか意味の無い言葉を発してモゾモゾと動く赤子を直感的に"両面宿儺"だとわかった。
"私"は近づいて抱きしめた
4つの大きな目と目が合ったような気がしたのは気のせいだろう。
生後間もない赤子は視力が弱いらしく、殆どぼやけて見えている
指を顔に近づけると小さな手が指を握った。
ぬるい体温に冷えた指先が温まる
ふいに加護欲がそそいで、愛おしい気持ちになる。
そのまま指は赤子に委ねて遊ばれていた。
よくよく見ると腕が4つある。
あの腕は生まれつきだったのか…
その時だった。
"私"は、はっとして赤子の首に手を添えた
何かから目が覚めたようだった。
頭に流れ込んでくる"この人"の感情
「殺せ」「怖い」「呪いを祓え」「根源を断て」
様々な人の様々な声が後ろから聞こえる
口から吐き出したその言葉こそ呪いだ。
少しぐずった声を出すからああ、泣かないで。
そう思っていてもこの手は止まらない。
嫌だ、いやだ。
こんな赤子を殺すなんてできない。
苦しそうに顔を歪めているのを見て申し訳なさと哀しさが襲う。
ごめんね、ごめんね…許して…
その憎しみと恐怖の奥底には悲しみがあった。
濡れた赤子の瞳に見慣れた姿が映る
その姿は…
__私?
そう思った瞬間、桜が私の視界を埋め尽くした
殺せ
何故だろうか、その言葉が脳裏に刻み込まれていた。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。