被害者は冷汗を大量に流し、顔を先程よりも比べ物にならない程、歪ませた。
私が、スーツの胸ポケットから小さなジップロックに入った"布の切れ端"を出した。
犯人は何か吹っ切れた様な笑顔を作ると、ポケットから小さなナイフを取り出す。
周りの記者達は顔面蒼白。
我先にと駆け出し、その場を離れていった。
そう云いながら犯人は私にナイフを突き立てる。
私は余りの速さに避け切れないと目を瞑ると、何時になっても痛みが来なかった。
目を開けると、警察に取り押さえられた犯人が目に映る。
私の前に立っている青年は、目を閉じたまま眼鏡を掛け、笑顔で私に説明した。
"異能"
聞いた事はあった。
自分には関わる事のない世界だと思っていたが、そんな事はなかったらしい。
私が、踵を返し帰ろうとすると、不意に手首を掴まれる。
青年は残念そうに目を伏せた。
手を強く握りながら決心した様に、云ったが青年は首を横に振った。
青年は深く溜息を吐くと、私に顔を凄い勢いで近付け、怒った様に云った。
皆、青年が誰か判ったよね!?
また次回
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。