久し振りに声を荒らげた気がする。
青年は嫌そうに両耳を塞ぐと、急に真面目な顔で私に語り掛けてきた。
私は呆気にとられた様に、口を開く。
急に青年が私の手首を掴むと何処かに私を連れて行こうと引っ張る。
青年の低い声に思わず黙ってしまった。
丁度その場に着けば、私の母が警察の手によって連行される所だった。
廊下ですれ違う時に、ふと目が合う。
私は冷汗が全身から流れ出した。
お母さんは警察の腕を振り払うと、私に手を上げる。
喉から音のない悲鳴が出た。
叩かれる
青年の白い頬には、確りと、打たれた跡が残っている。
お母さんは分が悪くなったのか、黙り込んだ。
お母さんはその一言を吐き捨てると、大人しく警察に連行されていった。
私は両手で顔を覆いながら、座り込んだ。
私は涙を強引に拭うと、青年を引き止めた。
青年は私から目線を反らし、反対側へと歩き出す。
男性は人差し指を真っ直ぐに立て、振り向きながら、無邪気な笑顔で云った。
最近、財布が軽いんすよ。
また次回
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。