【莉犬SIDE】
大きく深呼吸をする。
そして、震える手にぎゅっと力を入れた。
頭にはあのクソ野郎の声がガンガンと響いている。
『皆を殺せ。その血で服を赤く染めろ』と。
雄蔵。
俺は今この男に猛烈に腹を立てている。
俺を操っていた犯人。
俺の叔父にあたるらしい。
血縁関係があったから身体を乗っ取りやすかったんじゃないか、ってジェルくんが言ってた。
正直、こんな奴と血が繋がってるなんて吐き気がする。
もう皆を殺すなんて御免だ。
ガンガン痛む頭を抱えながら、俺はなーくんと約束した場所へたどり着く。
あまりの頭痛に座り込んでしまった俺を、なーくんが覗き込む。
脂汗が頬を伝う。
俺はこの頭痛に長時間は耐えられない。
なーくんの作戦で行ってしまうと、自分の番が来た頃には、俺は使い物にならなくなっているだろう。
はっと顔を上げる。
なーくんの真剣な瞳と目が合う。
そして、にやりと彼の口角が上がった。
俺も微笑み返す。
るぅとくんが教室から出てくる。
そういってるぅとくんがハンカチを取り出す。
こいつ…イケメンだぁ…
暗闇の奥からジェルくんの叫び声が聞こえた。
頭痛に顔を歪めながら、でも覚悟を決めてそう返す。
放送が鳴る。
2人に見送られて、俺は赤い人に会いに、西館3階へと足を踏み出した。
ぺた、ぺたと足音が聞こえる。
ごくり、と唾を飲み込む。
俺の予想が正しければ、この奥に。
この奥に、赤い人がいる。
脚が震えだす。
なんで…俺が怯える資格なんてないのに。
何度見たんだ。
俺のせいで、皆が怯える顔を…!
____絶対に、勝つ。
俺は、廊下に飛び出した。
暗闇に、ぎょろりと目が光っていた。
その目が、俺を見つめる。
赤い人が笑う。
俺は反対方向に、一心不乱に駆けだした。
一刻でも早く、るぅとくんが待ってるところへ…!!!
背中に衝撃が来て、ベたんと廊下に倒れ込む。
クソっ、もう追いつかれて…!!!
歌を歌いだす。
この歌を歌い終わる前に…その前に、辿り着かないと…!!
良かった、案外近くまで戻ってたみたいだ。
それなら。
俺は自分にしがみつく赤い人を見下ろす。
_____そして腕に握っていた人形を、思いっきり奪い取った。
そして、それを思いっきりぶん投げる。
なーくんの言った通り、たしかに“それ”はぬいぐるみにしては随分重かった。
るぅとくんが落下地点へ走り込んで、キャッチしたのが見えた。
赤い人が怒る。
俺はそれを、力を振り絞って引きはがした。
皆を殺した、この力。
それがまだ残っている事に安堵する。
るぅとくんが、無事になーくんにぬいぐるみを渡すまで。
そのぬいぐるみをなーくんが繋いで…
ジェルくん、さとみくん、ころちゃんに渡るまで。
俺の心臓が止まるまでは_____絶対に…!!!











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!