第31話

10日目②
270
2025/10/21 07:00 更新
【莉犬SIDE】



大きく深呼吸をする。



そして、震える手にぎゅっと力を入れた。



頭にはあのクソ野郎の声がガンガンと響いている。



『皆を殺せ。その血で服を赤く染めろ』と。



ッ…うるさい、!



雄蔵。



俺は今この男に猛烈に腹を立てている。



俺を操っていた犯人。



俺の叔父にあたるらしい。



血縁関係があったから身体を乗っ取りやすかったんじゃないか、ってジェルくんが言ってた。



正直、こんな奴と血が繋がってるなんて吐き気がする。





…ッ、



もう皆を殺すなんて御免だ。



ガンガン痛む頭を抱えながら、俺はなーくんと約束した場所へたどり着く。


なー、くん…
莉犬くん…いけそう、?



あまりの頭痛に座り込んでしまった俺を、なーくんが覗き込む。



脂汗が頬を伝う。


無理、だよ…
だから、囮役は…俺がやるって言ったじゃん
…成程、ごめん莉犬くん、今理解した



俺はこの頭痛に長時間は耐えられない。



なーくんの作戦で行ってしまうと、自分の番が来た頃には、俺は使い物にならなくなっているだろう。


お願い、なーくん…何もしないのは嫌なの…!
…分かった。莉犬くんに囮役を頼むよ
…ほんと、?


はっと顔を上げる。



でもやるからには___



なーくんの真剣な瞳と目が合う。



そして、にやりと彼の口角が上がった。


30秒___いや、1分くらいは稼いでね?

…上等!



俺も微笑み返す。


じゃあ持ち場変更しようか
囮を莉犬くんがやるんだったら、莉犬くんの本来の持ち場はるぅとくんで行こう
…え?
そっちの方が連係プレーできそうでしょ?
ね、相方さん
任せて下さいよ
…!いつの間に…!



るぅとくんが教室から出てくる。



莉犬なら、何としてでも自分が囮役やろうとしそうだから
まぁ、頭痛いのは想定外でしたけど。大丈夫?



そういってるぅとくんがハンカチを取り出す。



こいつ…イケメンだぁ…




俺がるぅとくんの元々の位置に入るよ
分かりました。じゃあ僕はなーくんに渡せばいいんですね?
その…ぬいぐるみを
ん、そういうこと!
なーくん!こっちスタンバイオッケーやで!



暗闇の奥からジェルくんの叫び声が聞こえた。



了解!___莉犬くん、いける?
勿論…!!


頭痛に顔を歪めながら、でも覚悟を決めてそう返す。


???
『赤い人が、西館3階に現れました』



放送が鳴る。



よし、圏内に居る…!
じゃあ、行ってくるね
うん、気を付けて


2人に見送られて、俺は赤い人に会いに、西館3階へと足を踏み出した。











ぺた、ぺたと足音が聞こえる。



ごくり、と唾を飲み込む。



俺の予想が正しければ、この奥に。



この奥に、赤い人がいる。







…ッ



脚が震えだす。



なんで…俺が怯える資格なんてないのに。



何度見たんだ。



俺のせいで、皆が怯える顔を…!










____絶対に、勝つ。









俺は、廊下に飛び出した。



おいっ…!!
こっちに来い…ッ!!!




暗闇に、ぎょろりと目が光っていた。



その目が、俺を見つめる。





赤い人
…キャハハハ!!!



赤い人が笑う。



俺は反対方向に、一心不乱に駆けだした。



一刻でも早く、るぅとくんが待ってるところへ…!!!



あ゛っ…?!



背中に衝撃が来て、ベたんと廊下に倒れ込む。



クソっ、もう追いつかれて…!!!



赤い人
あーかいふーくをくださいなー



歌を歌いだす。



この歌を歌い終わる前に…その前に、辿り着かないと…!!



…莉犬!
…!
るぅと、くん!!



良かった、案外近くまで戻ってたみたいだ。




それなら。




俺は自分にしがみつく赤い人を見下ろす。












_____そして腕に握っていた人形を、思いっきり奪い取った。




るぅとくんっ!!!!!



そして、それを思いっきりぶん投げる。



なーくんの言った通り、たしかに“それ”はぬいぐるみにしては随分重かった。



ありがとうッ!



るぅとくんが落下地点へ走り込んで、キャッチしたのが見えた。



赤い人
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!



赤い人が怒る。



俺はそれを、力を振り絞って引きはがした。



…良かった、まだ…残ってた


皆を殺した、この力。



それがまだ残っている事に安堵する。



…まだ…通さないよっ…!!



るぅとくんが、無事になーくんにぬいぐるみを渡すまで。




そのぬいぐるみをなーくんが繋いで…




ジェルくん、さとみくん、ころちゃんに渡るまで。




俺の心臓が止まるまでは_____絶対に…!!!







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