ある日の任務終わり
ローレンは玄関のドアを開け、 重いため息をつきながら靴を脱いだ。
今日の任務は失敗だった。
判断ミスで部隊の仲間が負傷し、命を落としかねない状況だったのに、ローレンは 何もできなかった。
自分の無力さに苛立ち、 悔しさが胸を締め付ける。
リビングのソファに座っていたあなたが、 明るく声をかける。
ローレンは沈んだ声で答えた。
あなたはローレンの様子を見てすぐに何かあったと察したが、 あえて軽い調子で話しかけた。
あなたはローレンを元気づけようとした。
だが、 その言葉がローレンの心の中の怒りを引きずり出してしまった。
その瞬間、 空気が凍りついた。
あなたの目が 驚きに見開かれる。
あなたは それ以上何も言わず、踵を返して部屋を飛び出した。
ローレンが呼び止めようとするが、 あなたは振り返らない。
玄関のドアが乱暴に閉まる音が響いた。
ローレンは 自分が口にしてしまった言葉の重さを痛感し、拳を握りしめる。
あなたは、ローレンを励まそうとしてくれただけだったのに。
なのに、自分は あなたの過去を傷つけるような言葉をぶつけてしまった。
ローレンは反射的に 玄関のドアに手をかけた。
けれど、 開けようとしたその手が止まる。
追いかけるべきだ。
すぐに謝るべきだ。
そう思っているのに――
喉の奥が詰まる。
今の言葉が どれだけあなたを傷つけたか、ローレン自身が一番よく分かっていた。
あなたは暗殺者だった過去を 軽く話すことはあっても、それを自分から肯定したことは一度もなかった。
「人を殺してきたお前には、わからないよ。」
まるで あなたの生き方を否定するような、最も言ってはいけない言葉。
後悔が押し寄せる。
あなたが どんな気持ちで飛び出して行ったのかを考えるだけで、胸が苦しくなる。
追いかけなきゃ。
そう思うのに、 足が動かない。
ローレンは 深く溜め息をつきながら、玄関のドアにもたれかかった。
あなたはどこに行ったのか。
どうすれば、謝れるのか。
今すぐにでも探しに行きたいのに、何も言葉が浮かばない。
ローレンは 拳を握りしめ、ただ静かに立ち尽くすしかなかった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。