【上司が優し過ぎる話】─太宰治
⚠上司が腹立つ話の逆ver.(?)
私には上司が居る。
マフィアで扱かれていた頃、三度だったか、彼の元で仕事を熟した。
まァ、今は色々あって二人探偵社に居るのだが。
乱歩さんに拾われ、保護して貰った私は、後から入って来た太宰さんにビビりにビビッた。太宰さんの前職の件の賞金は遠慮しておいた為、敦くんの代まで判らないことになっている。
そうそう、話がズレた。
「あなたちゃん、今日の経費と明日の依頼についての書類、署名だけ欲しいんだけれど時間あるかい?」
まァ、無ければ時間作るから云って。
という太宰さんを横目に、私は敦くんの顔を見つめていた。
青い。青褪めている。御免なさい、本当に御免なさい。
『あの、えっと、其れは……全て私の仕事、デスヨネ』
「? 君の仕事は皆の仕事だよ、さぁ何でも云って」
【それでも刀は手放せない】─泉鏡花
前世は鬼狩り。今世は探偵をやっている私は、今世でとある女の子に出会った。
「………あなたさん、お茶」
「……晴れてる。あなたさん、すごく晴れてる。あの雲、綺麗。」
「……ッ、あなたさん、腕……如何し、たの」
「あなたさん、隠し事しないで」
◇
「あなたさん?」
伸ばした腕は、腕ではない。満足そうに微笑む彼女を撫でている手は私のものではない。義手にさえも嫉妬してしまう心に自嘲しながら、私は呟く。
「鏡花は、可愛いねェ……何時までも、そのままで居てね。」
「………」
ちらりと私の机に置かれた刀を一瞥した鏡花。悲しそうに瞳を揺らした彼女は、きゅ、と其の着物を握る。
「ね、え、あなたさん、私、が。あなたさんと、一緒に居たいって。手放さないで欲しいッて云ったら…………貴女は、手放さないで、呉れる?」
私が、今迄繋いできた、何度離されたか判らない其の手は、酷く小さかった。握り返された力も、弱くまるで離されても善い様にと距離を置いているみたいで。
だけど、今私が伸ばした手を握って居る彼女は、ぎゅっと力を込めていた。
其の、力を。私は自分の手で知りたかったなぁ、なんて。
「………ふふ、当たり前だよ」
◇
脳裏に過る記憶。熱い身体。両腕義手な私だが、片腕はもう飛んでしまっていた。
「はは、は、ごめんね、鏡花」
私は最後に、刀を片手で握り直した。
「………私は、けっ、きょく、刀を手放せない、の。
……きょ、かの、手、離し……ちゃ、てごめ……ね」
誰かの悲鳴が聞こえた気がした。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。