第3話

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2022/09/19 01:39 更新



【上司が優し過ぎる話】─太宰治

⚠上司が腹立つ話の逆ver.(?)




私には上司が居る。
マフィアで扱かれていた頃、三度だったか、彼の元で仕事を熟した。

まァ、今は色々あって二人探偵社に居るのだが。

乱歩さんに拾われ、保護して貰った私は、後から入って来た太宰さんにビビりにビビッた。太宰さんの前職の件の賞金は遠慮しておいた為、敦くんの代まで判らないことになっている。

そうそう、話がズレた。


「あなたちゃん、今日の経費と明日の依頼についての書類、署名だけ欲しいんだけれど時間あるかい?」

まァ、無ければ時間作るから云って。

という太宰さんを横目に、私は敦くんの顔を見つめていた。
青い。青褪めている。御免なさい、本当に御免なさい。

『あの、えっと、其れは……全て私の仕事、デスヨネ』



「? 君の仕事は皆の仕事だよ、さぁ何でも云って」






【それでも刀は手放せない】─泉鏡花




前世は鬼狩り。今世は探偵をやっている私は、今世でとある女の子に出会った。

「………あなたさん、お茶」

「……晴れてる。あなたさん、すごく晴れてる。あの雲、綺麗。」

「……ッ、あなたさん、腕……如何し、たの」

「あなたさん、隠し事しないで」






「あなたさん?」



伸ばした腕は、腕ではない。満足そうに微笑む彼女を撫でている手は私のものではない。義手にさえも嫉妬してしまう心に自嘲しながら、私は呟く。

「鏡花は、可愛いねェ……何時までも、そのままで居てね。」

「………」

ちらりと私の机に置かれた刀を一瞥した鏡花。悲しそうに瞳を揺らした彼女は、きゅ、と其の着物を握る。

「ね、え、あなたさん、私、が。あなたさんと、一緒に居たいって。手放さないで欲しいッて云ったら…………貴女は、手放さないで、呉れる?」

私が、今迄繋いできた、何度離されたか判らない其の手は、酷く小さかった。握り返された力も、弱くまるで離されても善い様にと距離を置いているみたいで。

だけど、今私が伸ばした手を握って居る彼女は、ぎゅっと力を込めていた。


其の、力を。私は自分の手で知りたかったなぁ、なんて。


「………ふふ、当たり前だよ」







脳裏に過る記憶。熱い身体。両腕義手な私だが、片腕はもう飛んでしまっていた。

「はは、は、ごめんね、鏡花」



私は最後に、刀を片手で握り直した。




「………私は、けっ、きょく、刀を手放せない、の。
……きょ、かの、手、離し……ちゃ、てごめ……ね」




誰かの悲鳴が聞こえた気がした。

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