第10話

10話
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2019/03/12 16:52
ベッドの上で寝ているハユンに近づく
まだ息はある…けれどいつ尽きるか分からない
ハユンは抗がん剤の副作用のせいか髪が沢山抜けていてニット帽を被っている
そして最後に会った時よりも痩せていた
体にたくさんの注射痕の後
体に沢山付けられた管
見てるだけで痛々しかった
グク
グク
何で…なんでハユンが
俺は最後に会った時のハユンを思い出した
帰る時間だったから帰ると言い
屋上で待ってると言った時悲しそうな顔をしてたこと。それは{もう行くことが出来ない}そういう事だったんだ…と
俺はハユンの手を握った
1度も繋いだことのない手
その手はまだほんのりと暖かかった
泣きながら手を握っていると少しハユンの手が俺の手を握り返した
グク
グク
!!!…ハユン!?
ハユン
ハユン
…なか…な…ぃ…で
喉に管があるため上手く声が出せないのだろう
けれど頑張って声を出して伝えてくれている
俺は
グク
グク
泣かねえよ…ハユン
ハユン
ハユン
…[ニコ]
グク
グク
泣かねえからさ…俺
もう…泣かねえから!
グク
グク
…生きてくれ
すると彼女は
ハユン
ハユン
…泣いてる…くせ…にㅋ
どこまで笑顔でいようとするんだ
彼女は唇を噛み締めて目に涙を浮かべているが流そうとしなかった
グク
グク
…ハユン
ハユン
ハユン
な…に
グク
グク
好きだ…
ハユン
ハユン
……しっ…てる…わ…パボ[ニコ]
グク
グク
!!!…ははっ[ニコ]
ハユン
ハユン
わたしも…だよ…グ……ク…………。
そう言うと彼女に繋がれているコンピューターがピーーーーと言う音を鳴らした
グク
グク
ハユン!ハユン!
俺は必死に呼び掛けた
けれど…彼女からの応答は
無かった

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