ベッドの上で寝ているハユンに近づく
まだ息はある…けれどいつ尽きるか分からない
ハユンは抗がん剤の副作用のせいか髪が沢山抜けていてニット帽を被っている
そして最後に会った時よりも痩せていた
体にたくさんの注射痕の後
体に沢山付けられた管
見てるだけで痛々しかった
俺は最後に会った時のハユンを思い出した
帰る時間だったから帰ると言い
屋上で待ってると言った時悲しそうな顔をしてたこと。それは{もう行くことが出来ない}そういう事だったんだ…と
俺はハユンの手を握った
1度も繋いだことのない手
その手はまだほんのりと暖かかった
泣きながら手を握っていると少しハユンの手が俺の手を握り返した
喉に管があるため上手く声が出せないのだろう
けれど頑張って声を出して伝えてくれている
俺は
すると彼女は
どこまで笑顔でいようとするんだ
彼女は唇を噛み締めて目に涙を浮かべているが流そうとしなかった
そう言うと彼女に繋がれているコンピューターがピーーーーと言う音を鳴らした
俺は必死に呼び掛けた
けれど…彼女からの応答は
無かった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!