第17話

白を黒く染めあげて
313
2024/02/03 01:44 更新


全身から絞り出すように叫び、私は駆け出した。

さっき、夜鈴に突き飛ばされた時に一瞬だったけど、ひとつだけ色の黒い骸骨が見えた。

きっと、あれだ。壊さないといけないものは。
鬼幽
あかり!?何してる!

────早く逃げろ!
私が逃げていないことに気づいた鬼幽が、怒鳴った。

私も負けじと叫ぶ。
神代 あかり
嫌だ!一人で逃げるなんて無理だよ!
鬼幽
そんなこと気にしなくていい、俺たちは妖怪だから大丈夫だ!だから早く逃げろ!
夜鈴
ワタシたちは妖怪でお前は人間ね!人間はすぐ死ぬアル!早く逃げるよ!

とても優しくて温かいふたりだと思う。自分たちだって危ない状況なのに、血もたくさん出て痛いはずなのに、私のこと気にかけて。


────妖怪だから大丈夫。

そう言えば、あのおばあさんも‪”‬大丈夫、あの子は妖怪だよ。あれぐらいでくたばったりしないさ‪”‬なんて言ってたな。

大丈夫、大丈夫って
神代 あかり
どう見ても大丈夫じゃないでしょ!

そう叫んだ時だった、白い頭骸骨たちの中に黒が見えた。
あれだ、見つけた。

私は、黒い頭骸骨を追いかけるために駆ける。
神代 あかり
鬼幽、夜鈴!骸骨の中に一つだけ黒くて額に星が逆になった感じのマークが描かれてるやつがあるの!

あれを壊すことができれば、鬼幽も夜鈴も瑛生くんもきっと助けることができる。

私の目的に気づいたのか、妖怪は鋭い黒髪を伸ばしながらこちらに向かってくる。
それを鬼幽と夜鈴が髪を掴んで阻止してくれた。
鬼幽
あかり、それがこの妖怪の本体だ!

私は弓と矢を構えた。
矢はさっき突き飛ばされた時に折れてしまったのでこれが最後の一本だ。これが最初で最後のチャンス。


手の震えが止まらない、あの時みたいに。
神代 あかり
(このままじゃ中らない……)

どうしよう、どうしよう。

大粒の汗が、不快な感触で頬に筋を引く。体は冷水を浴びせられたように冷たくなる。

耳に入ってくる、周りの草木が風に揺れる音とか、蝉の鳴く声がうるさくて仕方ない。



ああ、私じゃきっと駄目だ、あたらない。


神代 絹夜
まーた、それね。こんひゃーたれが

黒髪を後ろできっちりと団子結びにし、緑を基調とした着物と
熊本弁が特徴的な私の祖母が幼い私に向かってそう言った。


だって、ぜんぜん中らないんだもん──!

幼い私が部屋の隅で泣きながら、震えた声で言い返す。
神代 絹夜
はぁ……そんなこと言いよったら中るもんも中らんくなるよ
神代 絹夜
言葉には魂がこもるとばい

そんなの知るわけない、幼い私は不貞腐れたように膝を抱える。
神代 絹夜
よかけん、はよこっちゃん来んね。
祖母が畳の上に正座をして、自分の太ももを叩いた。私は祖母の膝の上に座る。
すると、祖母は私の頭を撫でてくれた。
神代 絹夜
弓は好かんとね?
祖母が私に優しい口調で聞く。

弓道は嫌いじゃない、むしろ好きだ。矢をあてられない自分が嫌なんだ。
神代 絹夜
アンタは、焦るけん中らんくなっとばい
神代 絹夜
弓は自分の体、矢は自分の心。自分の一部として考えんば

そういえば、こんなこともあったな。
ふと昔のことを思い出して嬉しくなった。今まで忘れてたから。

いつの間にか、手の震えも大粒の汗も止まっていた。
神代 あかり
(大丈夫、私なら絶対できるよ)

自然と手を離れた矢が空気を切り裂き、黒く染まって骸骨を射抜いた。

目の前に白いもやがかかったように視界が霞む。それが嫌で、強くまぶたを閉じた。




白木 椿紀
白木 椿紀
今度、スマホと電話番号を変えるのでこのアカウントとこの小説は消えます。
白木 椿紀
白木 椿紀
スマホが変わった際に新しいアカウントを作り、淡い月を愛していたいをまた同じように書きます!
白木 椿紀
白木 椿紀
なので安心してください☺️
白木 椿紀
白木 椿紀
アカウントが変わる時はお知らせします!

プリ小説オーディオドラマ