全身から絞り出すように叫び、私は駆け出した。
さっき、夜鈴に突き飛ばされた時に一瞬だったけど、ひとつだけ色の黒い骸骨が見えた。
きっと、あれだ。壊さないといけないものは。
────早く逃げろ!
私が逃げていないことに気づいた鬼幽が、怒鳴った。
私も負けじと叫ぶ。
とても優しくて温かいふたりだと思う。自分たちだって危ない状況なのに、血もたくさん出て痛いはずなのに、私のこと気にかけて。
────妖怪だから大丈夫。
そう言えば、あのおばあさんも”大丈夫、あの子は妖怪だよ。あれぐらいでくたばったりしないさ”なんて言ってたな。
大丈夫、大丈夫って
そう叫んだ時だった、白い頭骸骨たちの中に黒が見えた。
あれだ、見つけた。
私は、黒い頭骸骨を追いかけるために駆ける。
あれを壊すことができれば、鬼幽も夜鈴も瑛生くんもきっと助けることができる。
私の目的に気づいたのか、妖怪は鋭い黒髪を伸ばしながらこちらに向かってくる。
それを鬼幽と夜鈴が髪を掴んで阻止してくれた。
私は弓と矢を構えた。
矢はさっき突き飛ばされた時に折れてしまったのでこれが最後の一本だ。これが最初で最後のチャンス。
手の震えが止まらない、あの時みたいに。
どうしよう、どうしよう。
大粒の汗が、不快な感触で頬に筋を引く。体は冷水を浴びせられたように冷たくなる。
耳に入ってくる、周りの草木が風に揺れる音とか、蝉の鳴く声がうるさくて仕方ない。
ああ、私じゃきっと駄目だ、中らない。
黒髪を後ろできっちりと団子結びにし、緑を基調とした着物と
熊本弁が特徴的な私の祖母が幼い私に向かってそう言った。
だって、ぜんぜん中らないんだもん──!
幼い私が部屋の隅で泣きながら、震えた声で言い返す。
そんなの知るわけない、幼い私は不貞腐れたように膝を抱える。
祖母が畳の上に正座をして、自分の太ももを叩いた。私は祖母の膝の上に座る。
すると、祖母は私の頭を撫でてくれた。
祖母が私に優しい口調で聞く。
弓道は嫌いじゃない、むしろ好きだ。矢をあてられない自分が嫌なんだ。
そういえば、こんなこともあったな。
ふと昔のことを思い出して嬉しくなった。今まで忘れてたから。
いつの間にか、手の震えも大粒の汗も止まっていた。
自然と手を離れた矢が空気を切り裂き、黒く染まってしまった骸骨を射抜いた。
目の前に白い靄がかかったように視界が霞む。それが嫌で、強く瞼を閉じた。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。