夜鈴と呼ばれていた女の子は、鬼幽にそう尋ねられると分かりやすく動揺し始めた。
夜鈴はこれ以上ここにいる理由を深掘りされたくないからか話題を素早く切り替えた。
私がそう言うと鬼幽が、ふっと息を吐くように顔をほころばせて笑った。
その笑顔に喉がきゅっとしまって
今まで、静かで規則的だった心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
この間とどこが違うのか探るためにじっと鬼幽を見つめていると
鬼幽の服装が、この間の着物ではなく制服を着ていることに気がついた。
素直な感想を述べた私を見て、夜鈴はなぜか目を見開きながら
と呟いた。
同意を求めようと視線を夜鈴から鬼幽に移す、目が合うと
鬼幽はにこっ、と微笑んだ。
その笑顔に胸がむず痒くなって不自然に目を逸らしてしまう。
私が慌てて、言い訳をしていると1匹の三毛猫が紙を咥えながらこっちに向かってきて、
鬼幽の近くまで来ると「ニャーン」と可愛らしい鳴き声を上げた。
そう言うと、猫が咥えていた手紙を受け取り毛並みを整えるように撫で始めた。
猫は気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らす。
私は鬼幽から受け取った手紙を開封すると、その中身を声に出して読み始めた。
【私の息子が先日、家の裏山にある池に友人と遊びに行ったところ池から黒い”なにか”が伸びてきて友人はそれに掴まれ池へ引きずり込まれて】
【息子は命からがら逃げ帰って来たそうです、息子の友人が行方不明になって2日経ちましたが未だに見つかっていません。】
【どうか、息子の友人を助けてください。
塚本 圭一】
前の私と同じで、友達が行方不明なんだと思うと、他人の話なのに他人事のように思えなくなった。
この間は武器も何も無かったけど、今日は弓あるし…この間よりは役に立てるかも
さっきまで、怪訝な面持ちだった夜鈴が一瞬で満足気な表情になった。
私が鬼幽のこと知ってるんですか?って聞いた時に、「知てるも何もワタシ、鬼幽の……」って何か言いかけてたし
もしかしたら、鬼幽の彼女って言おうとしてたのかも
そう考えると、胸が少し痛んだ。
私が悶々と考えている間に2人は歩き始めていたらしい。着いてこない私を不思議に思ったのか鬼幽が声をかけてきた。
私は、煮え切らない感情を抱えながら2人の影を追うように後ろを歩いた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!