第63話

こわいから
72
2021/09/05 09:12
もやもやの感情を抱えたまま
いつの間にか記念日になっていた

この日は風磨くんが仕事なので当日お祝いは出来ない
私は前もって休みを取っていた
なので今日は風磨くんを見送る

菊池「あなた、俺仕事行ってくるね…」

あなた「うん、頑張ってね」

少し元気の無い風磨くん
どうしたのかななんて思っていると
急に抱きしめられた

あなた「…風磨くん?どうしたの…?」

菊池「…ごめんね、当日に祝えなくて…」

少し悲しそうな彼の声
私はそれがなんだか嬉しくて可愛くて
自然と笑顔になっていた

あなた「大丈夫だよ!明日お祝いできるし…お仕事なんだからそんな顔しないの」

少し体を離し、彼の顔を両手で包む
いつも彼が私にしてくれるように

菊池「…うん、ごめんね」

大人しく私に顔を包まれながら
まるで子犬みたいな目をして見つめてくる

あなた「謝らないの、大丈夫だから」

そんな彼が可愛くて愛おしくて
私は自分から触れるだけのキスをしていた

少しだけ驚いている風磨くん
その顔がまた可愛くて愛おしい

驚いたと思ったら少しはにかんで
包んでいた私の両手を掴んだと思ったら
その手を彼の首に巻き付けられる

あれ?と思っているとそのまま彼の顔が近づき
いつも通り後頭部と腰を固定され
いつも通り彼の優しい少し大人なキス

菊池「…止まんなくなりそう」

キスをして唇を離したと思ったらこの発言

あなた「…ちゃんとお仕事行ってください」

菊池「はーいw」

笑いながら名残惜しそうに体を離してくれた

菊池「じゃあ、行ってくるね…なるべく早く帰るから」

あなた「うん、ちゃんと待ってるよ」

私がそう言うと微笑みながら
またちゅっと軽くキスをして
頭をくしゃくしゃにしながら

菊池「いってきまーす!」

と元気に玄関を出ていった

あなた「行ってらっしゃい!」

見えなくなりそうな背中に
私も精一杯の元気な声で見送る

ばたんとドアが閉まると
1人ぽつんと残され少し寂しい気持ちになった

あなた「…よし!準備しよ!」

自分に言い聞かせる様に声に出し
私も玄関を後にした
ちゃんとしたお祝いは明日するとして…
今日は彼の好物を作っておこうと計画していた
でも料理を作るにもまだ少し時間が早い

あなた「…何しようかな…」

とりあえず洗濯と掃除をする事にした
それでもまだ1時間しか経っていなかった

あなた「…暇だ」

ソファにごろんと横になりぼーっとテレビを見ていた
ぼーっとするとこの前の考えが浮かび上がってしまう

はなちゃんからは未だに連絡が無い
風磨くんからはなの名前を聞くことも無い

自分から連絡すればいいのに
もしかしたら後輩の勘違いかもしれないし
何か仕事関係で会っていたのかもしれないし

そう思うのに

怖くて自分から確かめることが出来なかった

あるわけがない、そんなわけない
私の頭の中には悪い考えしか浮かばなくなっていた

あなた「…買い物行こう!」

家にいても余計なことを考えてしまうだけだ
買い物でもして気晴らししよう

勢いよくソファから立ち上がり
私は出かける準備をした

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