第6話

泣きたいならば泣いていい。
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2022/01/18 21:18
センラside
センラ
っしょ、と
志麻をベットの上に下ろして俺は水をくみに行った。
まふまふ
何してるんですか?
センラ
ん?あぁ、汗かくかなって。
まふまふ
あぁ〜気がききますねぇ。
さては…センラくん、志麻くんのこと…!?
センラ
アホちゃうか。
くんできた水をベット横のテーブルに置き、布を絞る。
まふまふ
のせますか?
センラ
いや、大丈夫。
俺は志麻の額を軽く拭いた。
まふまふ
あ、拭くんですね。
センラ
そ。
よく看病してたからね。
まふまふ
誰のですか?
センラ
…坂、田。
まふまふ
あ…
少し気まずい空気が流れる。
うらた
あの…
戸の方から声が聞こえ、振り返る。
うらた
えっと…まーしぃの様子を見に…
センラ
あぁ。えっと確か…
うらた
うらたです。まーしぃの幼なじみで。
センラ
うらたさん。
うらた
うらたで結構ですよ。
センラ
そうですか。了解しました。
志麻さんなら、ほら。
うらた
…あ、良かった。落ち着いてますね。
センラ
はい。本当に良かったです。
うらた
そらるさぁん。まーしぃ大分大丈夫そうですよぉ。
戸に向かってうらたが話しかける。
そらる
…あ、ほんと?
戸を開けて入ってきたのは青い髪の青年。

歳は…俺より少し上だろうか。青いフード付きのコートを着ている。
そらる
ほんとだほんとだ。志麻さん大丈夫そうだね。
そらると呼ばれた青年が志麻の頭をそっと撫でた。
センラ
あの…
そらる
ん?あぁごめん。俺はそらる。占い師だ。
まふまふ
僕とおんなじ感じですよ!
センラ
なるほど。
そらる
…志麻さん頑張ったね。悲しかったんだもんね。まったく…1人でよく溜め込んじゃうんだから。
センラ
あの、頑張ったって?
そらる
朝からずっと村長探してたんだよ。
俺のとこにも来た。『お父さんどこか知りませんか?』って。
そらる
相当不安だったんだろうね。半分泣いてたもの。
うらた
俺らのとこ来た時は泣いてなかったよ。
そらる
だから頑張ったんだよ。
皆には心配かけたくなくて。
…なんて、優しい人なんだろうか。
そらる
あ、そうそう。そろそろ会議が始まるよ。みんな集まって。
うらた
わかりました。
センラさん、ごめんなさい。まーしぃについていて貰ってもいいですか?
センラ
 あ、はい。わかりました。
まふまふ
じゃあ僕ら行ってきますね。
まふくんたちが出ていってからしばらくしてから、志麻が目を覚ました。
志麻
ん…
センラ
あ…。大丈夫ですか?
志麻
あ…
志麻が起き上がろうとする。
俺は急いで背中を支えた。
志麻
ありがとうございます…
センラ
いえ、あの…先程は失礼を…
志麻
あぁいえ。俺の方こそ申し訳ありません。
取り乱してしまって…
センラ
家族を亡くされたです。取り乱して当然です。
志麻
…そう、ですね。
志麻
あの…名前を聞いてもいいですか?
センラ
センラと言います。
志麻さん、ですよね。
志麻
はい。さんつけなくていいですよ。なんか堅苦しいです。
センラ
じゃあ、志麻。
志麻
はい。
センラ
堅苦しいですから敬語もお互い外しましょう。
志麻
あ、わかった。
センラ
てことで…話しやすくなったから言うけどさ。
志麻
ん?
センラ
我慢せんでええんやで。
志麻
ッ…え?
センラ
辛いんやろ、泣きたいんやろ?
なのに、なんで泣かへんねん。なんで辛いって言わへんねん。
志麻
だ…って…
センラ
大丈夫。迷惑なんかじゃない。むしろ、志麻が我慢している方が気を使わなきゃ行けなくなるから迷惑。
志麻
…そうだね。
志麻
センラの言う通り、辛いよ。お父さんのこと考える度に、ここがキュッてなるの。
志麻が自分の服を掴んだ。
志麻
お父さんには…すごい沢山お世話になった…だから、恨んでるなんていいたくないけどさ…
志麻の目から涙が零れた。
志麻
なんで…? 
なんで…俺の事置いてったの…?
志麻
同じッ…家ッ…でッ、寝てたんだよッ…? 
なのにッ…なのに死んだのは…お父さん、だけッ…なんだものッ!
志麻
どうして?どうして人狼は俺を食べないで…お父さんを食べたの…?
どうして俺は…お父さんの隣にいたのにお父さんを守れなかったの…?


俺のせいで…お父さんが…
志麻の涙が志麻の布団に染みる。
その染みと、彼の訴えと涙を見ているとなんとも哀れに見えてきた。
俺は志麻をそっと抱き寄せた。
志麻
ッあ…?
センラ
…そんなに自分を責めんといて。
泣いていいって言ったけど、自分を責めていいとは言っとらんよ。
志麻
でも…でもッ…!
センラ
責めんな。だれも悪くないんやから。
そう、誰も悪くない。悪いのは、人に紛れた人狼だ。
センラ
今はただ大声で泣いて、悲しみを一旦落ち着かせるねん。 
誰かを恨むのは、あと。
志麻
グスッ…うん…うん…
あぁ…なんて儚い人だろう。
俺の腕の中で泣いている。なんて尊い人だろうか…。

まふくんの言う通りかもしれない。





俺は彼に、心を…

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