僕には気になる人がいる
去年一回だけ文化祭の時に話した青井いふくん
今日は始業式だから開始がいつもより遅いのにまちがえて早く来ちゃったけど、そのおかげで偶然教室に二人きり
それなのに『おはよう』そのたった一言が言えないの
だって今まで言ってこなかったのに急に言ったら変かなとか、普段話さないのにおかしいかな、とか
色々考えてるうちに
いふくんは廊下に出てしまう
友達のクラスに行っちゃった
ずっとたった一言の勇気がでないんだ
一人取り残された教室で、彼の机を見つめながら小さく呟く
ガラガラッ
いきなりいふくんが戻ってきた
え、聞かれてない!?
一人で虚空に挨拶してたやばいやつ扱いされる!?!?
なんの反応もないし、聞こえてなかったのかな、
よかった
今度こそ、ちゃんと言ってみよう
そう、たった一言勇気を出すだけ
ガラガラッ
クラスメイトが教室に入ってくる
しかも僕はあんまり話したことない
いいな、あんなに気軽に会話ができる関係
僕は声が詰まっちゃったのに
もう一度なんて、そんな勇気は出ないしタイミングも悪い
静かな教室に僕と彼のワークのページを捲る音だけが響く
ガラガラッ
さっきは言えなかった『おはよう』の一言
自然とテンポよく続く会話
しょうちゃんとならこんなに簡単なのに
あぁ、きょうも言えなかったな













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!